クールな男が熱狂の甲子園をさらに熱くした。阪神鳥谷敬内野手(36)がトドメの4号ソロを突き刺し、通算2000安打まであと7本とした。8回、中谷の逆転2ランが飛び出した直後だ。フルカウントから中日又吉の6球目、145キロをフルスイング。風にも乗った打球は右中間フェンスを越えた。

 「中谷のホームランでイケイケだったので、何とか塁に出たいという感じだった。(本塁打は)風ですね」

 ベンチに戻ると珍しく笑顔でナインとハイタッチした。今季473打席目で飛び出した待望の甲子園初アーチ。胸のすくような一撃に本拠地の虎党が沸く。金本監督も「1点差と2点差では大違い。あれで今日はいけるかなという気になりましたね」と大喜びだ。

 誰もが心待ちにしている。スタンドにはお手製の「鳥メーター」が複数掲げられている。あと7本。中日戦2試合を終えれば、敵地広島の3連戦が待つ。その後はまたホームに帰ってくる。Xデーはいつか? 甲子園での達成は? ただ、鳥谷の頭にあるのは個人の記録よりもチームの勝利だ。

 「目の前の1試合1試合を勝っていくしかないので、周りを気にせず1試合1試合勝っていきたいと思います」

 誰よりもチーム最優先の野球人生を過ごしてきた男は、偉業を前にしてもスタンスが変わることはない。【桝井聡】