6年ぶりの完封にも感情を出さないのが、らしかった。ロッテ涌井は「本当、普通の1勝だと思う」と淡々と言った。日本ハム打線を120球で散発5安打に抑え、今季5勝目。西武時代の11年5月25日広島戦以来の完封勝利を挙げた。

 決断が好投を生んだ。初回、先頭西川に対し、上体の正面を向けた。いつもは走者がいなくてもセットポジションから投げる。ノーワインドアップは「定かな記憶では13年に先発した時以来」。移籍前の形に戻した。「ストレートに力強さが出る」のが狙いだった。西川を142キロで押し込み遊ゴロ。快投の始まりだ。9回には、この日最速150キロを記録。「(ノーワインドアップは)体力を使う。勇気が要ること。後半戦、ずっと良くなくて。思い切りました。理想だった09年(16勝)10年(14勝)の形に近づけたい」と告白した。秋の訪れを感じさせる気候にも助けられ、余力を持って投げ抜いた。

 とはいえ、やっと5勝だ。チーム成績もふるわない。エースとして、じくじたる思いがある。「それで(伊東)監督が辞めるわけですし。でも、監督は恩返しは要らないと。自分たちのできることをやって、今後の野球人生につなげれば。みんな、そう思って欲しい」と願った。【古川真弥】