ウソやろ…。阪神が壮絶な逆転サヨナラ負けで自力Vを消滅させ、広島に優勝マジック12が点灯した。福留孝介外野手(40)が9回に逆転2ランを放って沸き返ったその裏、ラファエル・ドリス投手(29)が安部友裕内野手(28)に2ランを被弾。まさかまさかの幕切れに、みんなぼうぜん自失となった。だが金本知憲監督(48)は「最後まで、勝てるようにやるだけ」と鼓舞。全てが終わったわけではない。まだ21試合ある。

 全力で白球を追う中谷と糸井の足が止まった。悲劇の放物線は右中間席まで伸びた。ぼうぜんとした表情で、ドリスは三塁側ベンチに向かう。今季54試合目で初被弾となる2ランは、最悪のタイミングで訪れた。1点リードの9回1死二塁、勝利目前のサヨナラ負け。猛虎が壮絶に、散った。

 「ドリスで負けたら、仕方がないが、逆転しただけに…」。そんな問いかけに、金本監督は感情を押し殺しながら、振り返った。「でも…。本当に言う通り、ドリスで負けたら、どうしよもない」。絶対的守護神の投入で敗れた現実を、受け入れるしかなかった。

 奇跡の逆転優勝を果たすには、広島3連戦の3連勝が絶対条件といえた。前日4日は「選手がそう思ってくれているでしょう」とナインの奮起を期待していた。その言葉通り、虎戦士は勝利への執念を見せた。先発藤浪が4回で5点を失ったが、打線は食らいついた。6回には上本のソロで5-5の同点に追いつく。7回に再び勝ち越されても、敗戦寸前の9回、主将の福留が劇的な逆転2ランを放った。金本監督は言った。

 「本当に、なんていうのかな…。選手はやることをやった。できることをやったと思う」

 守備でも北條が観客席に飛び込むガッツを見せ、中谷はダイビングキャッチで好捕した。負けられない一戦で、誰もが気迫のこもったプレーを見せた。その姿勢は指揮官にも伝わった。

 それでもゲームセットの瞬間、広島を上回ることはできなかった。7-8。またも自力優勝の可能性は消滅し、広島にマジック「12」の点灯を許した。残り21試合で広島との直接対決は4。7・5ゲームの開きは、あまりにも大きい。逆転優勝はかなり厳しい状況にまで追い込まれた。

 「あとはやるしかないでしょ。最後までというか、明日、あさって、勝てるようにやるだけ」。金本監督はもちろん、ファイティングポーズを崩さない。残り21試合、優勝の可能性がゼロになるまで、戦い続ける。ナインの意地と奮闘が、明日への希望だ。【田口真一郎】

 ▼阪神の自力優勝の可能性が今季4度目の消滅。阪神は残り21試合に全勝しても最終成績は89勝53敗1分けで勝率6割2分7厘。広島は阪神戦残り4試合に全敗しても他球団との13試合に12勝1敗なら88勝51敗4分けで6割3分3厘となり、阪神を上回るため。

 ▼ドリスが来日88試合目、87イニング目にして初の被本塁打。ドリスの今季登板は53イニング。もし「50イニング以上登板して被本塁打0」なら、阪神では47年野崎泰一(51イニング2/3)以来、70年ぶりの快挙となるところだった。