ソフトバンク工藤公康監督(54)が、涙の2年ぶりV奪回だ。マジック1で迎えた西武22回戦(メットライフドーム)で圧勝し、球団はパ・リーグ18度目、1リーグ時代を含めると20度目のリーグ優勝を飾った。

 初めて経験するマウンドも、若き鷹の「エース」は冷静に、そして大胆に腕を振った。ソフトバンク先発の東浜巨投手(27)が、西武打線から9三振を奪うなど6回1失点でチームを2年ぶりの頂点に導いた。

 「いつもと違う独特の雰囲気だった。初回から飛ばして3回で倒れてもいいと思って投げた。それがいい方向にいった」。言葉通り、立ち上がりから飛ばした。秋山を一ゴロに仕留めると、源田、森と連続三振に切った。

 「ボクのプロ野球人生の中でもマジック1で投げさせてもらうのは、ほとんどないと思う。ありがたく投げさせてもらった」

 2回、先頭の山川に先制弾を許したが、動揺はない。貴重な試合の先発を任された責任感は背番号16の背中を押した。圧巻だったのは4回2死の浅村から5者連続三振。直球も150キロ台を計測するなど決め球のシンカー、カーブを駆使し、重量打線を封じ込んだ。

 「最低でも7回は投げたかったけど、精いっぱいでした。今日は勝ちを喜びたい。今までの優勝とは違う」。先発完投型を目指す男にとって、6回108球に終わった反省点はあったが、この日ばかりはVの重圧に打ち勝った充実感の方が大きかった。

 勝ち星は背番号と同じ「16」となった。ハーラートップに立ち、これからは個人タイトルも大きく視野に入ってきた。登板日以外は毎日パーツごとに体幹を鍛えブルペンにも週2度入って体力強化するなど、工藤監督の課すハードなトレーニングも乗り越えてきた。ただ、開幕からローテを守り続けた右腕は、まだ満足感ですべて満たされたわけではない。昨年は夏場に失速。規定投球回数にも到達せず、9勝で終わった。雪辱と飛躍を誓ったシーズン。チームVとともに自らも有終のシーズンを飾るつもりだ。【佐竹英治】