宜野座キャンプで実現した阪神金本知憲監督(49)と日刊スポーツ評論家の三浦大輔氏(44)との対談後編は、投手陣がテーマだ。現役25年で172勝の三浦氏がキーマンに挙げるのは、過去2年、低調な藤浪晋太郎投手(23)。「自分を知る」大切さを説くとともに実力を出し切るノウハウを明かした。【取材・構成=宮下敬至、酒井俊作】

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 三浦大輔氏(以下三浦) 今年の投手陣ですが、救援陣は盤石ですよね。

 金本監督(以下金本) (去年と)同じパターンでね。

 三浦 個人的には、石崎投手がすごく楽しみです。将来的に抑えもできるんじゃないかと考えています。(必勝パターンの)5人のなかに食い込んでいけるかだと思います。

 金本 リリーフが一番、ハイレベルだね。

 三浦 藤川投手はブルペンでのキャプテンですね。生きた教材というか、いい影響を与えていると思います。ブルペンはレベルアップして、やはり、先発ローテーションになりますね。

 金本 ウチの弱点だろうね。先発が5回しか投げられない。どうしても「魔の6回」になる。必ず、6回につかまって、リリーフに負担をかけてしまった。

 三浦 1人、2人くらいは完投できる投手が必要です。7、8回を投げてくれる投手が出てほしい。

 金本 藤浪か、メッセンジャーか。でも、メッセも(今年)37歳。降板するのを嫌がる。最後まで投げきりたいタイプだからね。

 三浦 同じくらい、藤浪投手にも期待していると思います。いい形でキャンプに入れましたよね。

 金本 そうだね。自分のなかで、結構、メンタル面で吹っ切れたものがあったみたい。技術的なものもそうだし「過去の2年間が吹っ切れた」みたいなことを言っていましたね。

 三浦 技術的なところもあるかもしれませんが、メンタル面で「当てたらどうしよう」という優しすぎる部分があるのでしょうか。もったいない。あれだけ投手で手足が長いのに…。どこかで「やるか、やられるか」の気持ちを持って、腹をくくってやらないといけない。自分も金本さんと対戦してマウンドでオーラ、気迫を感じていました。負けないようにいかないといけない。投手の気迫は打者に伝わるし、投手も打者の気迫を感じます。どちらか、ですから。やるかやられるかのはざまにいます。

 金本 読み合い、化かし合いでね。三浦大輔と対戦しているけど、捕手とも対戦している。敵が2人いたから(笑い)。

 三浦 前の打席で打たれたから、あえて同じ球種でいって、それをまた読まれたり…。結構、打たれたという印象は強いです。

 金本 でも、広島時代は打ったけど、タイガースに来てから苦手だった。不思議なもので俺自身は三浦に苦手意識がなかったけど、チームが打てなくなると、俺まで打てなくなるのよ。(元中日の)山本昌さんも、そう。打っていたし、嫌な球がない感じだった。タイガースは昌さん、全然、打てない。俺まで打てなくなって(苦笑い)。

 三浦 藤浪投手は今年がターニングポイントになりますね。殻を破れるか。このままズルズルいってしまうのが、もったいない。

 金本 器用にやろうとするんだよね。球種も多い。もっと勢いとか、思い切り腕を振ったり、そういうのを大事にしていいと思う。

 三浦 打者がせっかく嫌がっているのに、藤浪投手がそれ以上に自分自身を嫌がっているという印象があります。自分がどういうタイプの投手なのか。自分も現役時代、よく怒られました。ピンチになったら力任せで抑えたい気持ちが出ていて。「力任せでいったところで150キロ出るわけじゃないんだから。お前は、どういう投手なんだ。ピンチになっても、自分のスタイルを貫くしかない」と言われました。藤浪投手ならアウトコースの出し入れよりも、ある程度、アバウトでも力のある球を投げていく方がいいと思うんです。

 金本 それこそ、球のキレと緩急だけでもいいんじゃないかなとも思う。

 三浦 もちろん、ココという場面はある程度、狙わないといけない。でも、状況に応じてストライクゾーンで、狙いのスコープ、的を大きくしたり、小さくすれば、もっと楽に投げられると思います。ピンポイントで狙うより、極端に言えばストライクゾーンを4分割するイメージでいいですね。

 金本 理想が高いのはいいことだけど原点回帰でやってほしいなと思います。

 三浦 今年も、阪神の熱い戦いを楽しみにしています。(おわり)