東日本大震災から7年の11日、宮城出身の楽天岸孝之投手(33)が中日とのオープン戦に先発。4回を被安打2、無失点と好投した。「東北、宮城の出身。まずは野球で、しっかりといいところを見せられたら」。多くを語らず、58球に決意をぎっしり込めた。

 半旗を掲げ、黙とうで始まった節目の試合。岸は「やってきたことを出せればいいと思っていた。全部の球種でストライクを取れた。やってきたことはできた」と、地道な積み上げをそのまま出した。

 常時ストライク先行で主導権を取り、ボール判定された次球はボール半個、約3センチ微調整し、審判にストライクと言わせた。「真っすぐを狙ってくるところで、変化球でストライクを取れたら楽になる。キャンプから『しろ』と言われ、してきたことだから」。3回先頭の中日野本に対しては、球威と制球を両立させた内角直球を続け、根元からバットを折った。精密なコントロールは、一足跳びでは身に付かない。東北人らしく地に足を付け、3週間後の開幕に向けて歩む。

 「スッキリ、いいところで終われた」と話したが、過程の結果に興味はない。大風呂敷もいらない。「続けていけたらいいな、と思うが、そうもいかない。その日、その日の調子に合わせて、ベストを尽くしていけたらいい」。淡々と、自分の仕事をやり通すことで真の力が蓄えられ、ひたむきな姿にファンは共感を覚える。東北に根を張るプロ野球選手の本分を、岸はよく分かっている。【宮下敬至】