虎党のモヤモヤも吹き飛ばしてくれたはずだ。阪神糸井嘉男外野手(36)が、ヤクルト戦で今季甲子園初アーチを含む2安打4打点の大暴れ。今季のチーム最多8得点に大きく貢献し、連敗を3で止めた。パワーアップして豪快弾をぶっ放した糸井が、勝率5割に戻した虎を、ゴツイ体でけん引していくで~。

 のけぞるほど振り抜いたバットが、背中にゴツンと当たる。糸井がバチッとしばいた打球は、ぐわっと高く舞い上がって落ちてこない。観客の視線をかき集めた白球がストンと落ちたのは、バックスクリーン左だった。豪快な一振りでぶっ飛ばした今季甲子園初アーチは、勝利の流れを呼び込む3号2ランだ。

 「最初はチャンスで打てなかったので、真っすぐに合わせて自分のスイングをした。チームが連敗していたので、今日は絶対に負けられないと思っていた」

 1点リードの4回2死一塁だった。由規の初球、144キロ直球を一振りで仕留めた。7回にもセンターの頭上を越える弾丸ライナーの二塁打でダメ押しの2点を奪い、計4打点。昨年5月27日DeNA戦に並ぶ阪神移籍後最多打点となった。まだチーム総得点はリーグワーストだが、貧打にあえいでいた虎打線はこの日、今季最多8得点。同最多タイ13安打の猛攻の原動力となり、連敗も3で脱出。六甲おろしの大合唱を呼んだ。

 糸井は今季を迎えるにあたり、甲子園特有の右翼から左翼への強風に打ち勝てる筋力を求めた。昨季は手応えがありながら強風で失速する打球を体感。「技術(練習)は全然やっていない」。数メートルの飛距離アップを目指し「飛距離=筋力×スピード」の方程式を打ち立てた。持ち合わせるスイングスピードに加え、筋力を兼ね備えれば、浜風問題は解決される。オフにはボディービルトレも敢行。最強ボディーを手に入れ、開幕から全14試合連続出塁。3本塁打、打率3割6分4厘もチームトップと威力を発揮し続けている。

 チームは借金も返済。金本監督は対戦チームがひと回りしての勝率5割について「前半、もったいない試合が多かったね」と悔しげな表情で語ったが、超人がここから一気に加速させてくれそうだ。糸井は今季初のお立ち台で「緊張します。はい、すごい視線です! やっぱこういうすごい声援の中で打つのがもう、気持ちいいです!」と笑って歓声に応えた。「できるだけ多く、活躍して(お立ち台に)上がりたいと思います。皆さんの声援がすごく力になります!」。背中を押す声を、さらに大きくするのは超人のバットだ。【真柴健】

 ▼糸井の1試合4打点は、今季チーム最多。糸井にとっては17年5月27日DeNA戦と並び、昨年の阪神移籍後最多。なお、自身プロ最多は、オリックス在籍の15年7月30日の日本ハム戦5打点。