ヤクルトが今季初の4連勝を飾った。楽天戦の8回、ベテラン坂口智隆外野手(33)が相手エース則本から左翼に決勝適時二塁打を放った。昨季までは外野の一角を担ってきたが、メジャーから青木が復帰し外野は飽和状態に。坂口は一塁に初挑戦して開幕スタメンを勝ち取ると、打率はリーグトップも狙える3割3分7厘。逆境に強い玄人好みの好打者が、チームに勢いをもたらしている。

 失敗など頭になかった。8回2死三塁。坂口はファウルの後の2球目を、迷わず打ちにいった。逆方向にはじき返した低弾道の打球は、ジャンプした左翼手岡島の頭上を越えた。7回まで13三振で3安打に抑え込まれていた楽天則本を沈め、チームは今季初の4連勝。「球種は分かりません。僕は打てると思った球をいく。空振りを恐れず食らいつく気持ちでした」と必死の一打だと強調した。

 逆境を力に変えてきた。近鉄、オリックスで巧打の外野手として活躍したが、15年に減額制限を超える年俸提示を受けて自由契約。反骨心を胸にヤクルトに入団した後は2年連続で3割に迫る打率を記録し、外野の定位置を確保したかに思えた。そんな矢先の今季、またも試練に見舞われた。

 2月、メジャーから青木が復帰。ある日、ふと手にした新聞の開幕予想スタメンに自分の名前がなかった。「何とも思わないと言えばうそになります。新聞を見て悔しいだとか多少ありましたけどもぎ取るのはこの世界、自分自身だと思う」。不平不満は言わず、現実を直視する強さがあった。

 だからこそ、外野手として勝負しながら一塁にも挑戦できた。「どこにチャンスが転がっているか分からないので、そういうのを泥臭くつかみにいきます」と、慣れない一塁手用ミットを手にボールを追った。守備練習の映像を見ては課題を探った。「新たな挑戦も含めてチャンスの幅をいただいているので、何もネガティブにとらえることはなかった」。すべてに前向きな姿勢が道を切り開いた。

 攻守で欠かせない存在のベテランに、小川監督も「よく打った。則本はなかなか安打できる状態じゃなかったからね」と目を細めた。それでも坂口は「まだ好機で打てていないことが多い。後ろにつなぐ気持ちを忘れずやっていく」と引き締めた。最下位という苦境から、チームを上昇気流に乗せつつある。【浜本卓也】