ソフトバンクを支える人々にスポットを当て、随時掲載する「支えタカとよ」。今回は福岡・筑後市のファーム施設で働く筑後事業推進室の井川銀次さん(30)です。

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 筑後に新しい風を吹き込んでいる。広報兼演出担当を自認する井川さんは「お客様をどうやって呼び込むか。喜んでもらえるかを毎日、考えています」。09年から球団のオフィシャルメディアのメンバーとして、選手の動画などを間近で撮影してきた。1軍を見てきたことが今に生きている。

 15年までの2軍本拠地・福岡市の雁の巣球場でのウエスタン・リーグは無料だった。だが、16年からの舞台、タマホームスタジアム筑後での同リーグは有料だ。開場当初はまるで試合前の演出を行っていなかった。同年7月に来た井川さんのアイデアで、選手登場曲やスタンドのファンをビジョンに流すなど、少しずつ工夫を重ねた。

 昨年から球場DJも置いた。今季は地元タレントの渡辺菜々、お笑い芸人カイラの若い男女ペアを選んだ。フレッシュさで、ヤフオクドームとは違った色も出す。平日デーゲームが多いこともあり客層は高齢者が多い。「地元の高校と何かできないか」と昨年から地域貢献活動として数校を2軍戦に誘致。昨年に続き今年4月も八女高校のブラスバンドが演奏しホークスを応援した。「高校野球の応援でプロ野球って今までになかった。選手にも好評です」。ありそうでなかった光景に、カブスのダルビッシュが「これいいね」とSNSで反応するほどのインパクトを与えている。

 自身も筑陽学園で甲子園を目指していた。球団オフィシャルメディア時代から選手とも距離が近い。「だからこそ、選手を大事にしたい」。選手からスコアボードの名前が白文字だと、投手の投げた球と重なり打者にとって一瞬消えると指摘された。すぐにメーカーと交渉。文字をオレンジにして解消した。

 「筑後には人がいないから、いろんな役割をしないと」。開場3年目。30歳のアイデアマンが、どこにも負けないファーム本拠地に育てていく。【石橋隆雄】

 ◆井川銀次(いがわ・ぎんじ)1988年(昭63)5月18日、福岡市生まれ。筑陽学園ではエース。3年夏は準決勝敗退。福岡経済大(現日本経済大)に進学するが、右肘を痛め1年で野球をやめる。その後、プロ野球中継の仕事などに携わり、09年から球団オフィシャルメディアの一員。16年7月から筑後事業推進室へ。