ラミ流サプライズで、夏のコイを退治した。DeNAアレックス・ラミレス監督(43)は延長11回、2死一、二塁の場面で野手に代えて、投手のジョー・ウィーランド(28)を代打に送る奇策に出た。フルカウントから見極め四球。つないだ満塁の状況で倉本寿彦内野手(27)がサヨナラ打で、今季最長4時間48分の戦いに終止符を打った。昨季8月にも3戦連続サヨナラ勝ちを収めた広島に勝ち連敗を3で止めた。8月の横浜スタジアムで広島にサヨナラ勝ちは、もはや風物詩だ。

 午後10時半を過ぎた横浜スタジアムに、代打・ウィーランドがコールされた。延長11回。2死一、二塁のサヨナラのチャンスで、ラミレス監督が選んだ切り札だった。打席のウィーランドは「ピッチングのときより声援があって、気持ちが高まった」。一岡の初球146キロの直球をフルスイングでまた沸いた。「絶対につなごうと思った」。2球連続ボールを選び4球目もフルスイング。最後は2球連続見逃しで、冷静に四球を選んだ。

 3年前、マイナーリーグ3Aで経験していた。10回裏2死満塁。野手に代わって打席に立った。しかし見逃し三振。振りにいけなかった後悔の念を忘れていなかった。この日は前夜に先発しベンチで戦況を見守っていた。延長11回に「準備しとけ」と指示を受けストレッチを開始。つないだ満塁のチャンスを倉本のサヨナラ適時打で勝ち「最低条件はクリアできた」と仕事を果たした。

 奇策と見られる勝負手は、データに裏打ちされていた。投手ながら打力のあるウィーランド。昨季の3本塁打すべて広島戦だった。「ひょっとしたら代打で使うこともあるかも」とラミレス監督が冗談っぽく話していたことが実現した。この日の試合前ミーティングでは木塚投手コーチから「代打あるかもよ」と“予言”されていた。指揮官は「こういう状況は広島戦しかない。ひらめいたというよりも、データがベース」と数字を生かし采配した。

 逆転のカープに、苦い記憶をよみがえらせるサヨナラ勝ち。横浜で昨季、3戦連続サヨナラでコイたたきしたのも暑い8月だった。ラミレス監督は球団歴代6位タイとなる通算184勝目。「こういう勝ち方は勢いがつく。この展開は望まないけど勝ちにいきたい」。連敗ストップと同時に上昇気流に乗る。【栗田成芳】