初盆の父にささげるプロ1勝だ。2年目のロッテ土肥が、約2カ月半ぶりの1軍マウンドで念願の初白星をつかんだ。「今が一番うれしい。ボールは実家に送ろうと思います」。誰より喜んでくれたであろう最愛の父に、胸を張って贈りたい。

 5月22日、大阪・大東市で人気のうどん店を営んでいた父克彦さんが、49歳の若さで急逝した。肝臓を悪くしていた。家族葬が行われた26日は、先発するオリックス戦(京都)の前日。練習後にひっそり駆けつけ、別れを告げた。「周りの皆さんに心配をかけたくない」。当初はチームメートにも訃報を明かさず、気丈に左腕を振った。

 野球が大好きな人だった。「おやじ、阪神ファンだったんで」。小さいころから一緒にプロ野球を見た。尽誠学園(香川)時代に“聖地”甲子園に立つことはできなかったが、中継ぎから転向した今季、プロの世界で投手陣の先陣を切る姿を見せられた。

 初回に2ランを被弾したものの、以降は6回2死で降板するまで被安打は2本のみ。粗さが残る球をきっちり低めに集めた。「4試合目でようやく勝てました。良かった」。ロッテの遠征に合わせたように札幌に降り注いだ雨は、父のうれし涙かもしれない。【鎌田良美】