広島が、アーチ攻勢で優勝マジックを2つ減らして「26」とした。4回無死、会沢翼捕手(30)が同点11号ソロを放ち、5回には西川龍馬内野手(23)が決勝の5号3ランを放った。会沢は16日阪神戦で頭部死球を受け、5試合ぶりの先発復帰。守っては先発九里亜蓮投手(26)の粘投を引き出した。精神的な支柱でもある選手会長の復帰で、2位ヤクルトを再び借金1に突き落とした。

 ガツン。会沢がヤクルト風張のスライダーをしばいた。1点を追う4回。浮いた失投を逃さなかった。捉えた白球は広島の夜空に舞い上がり、打った瞬間スタンドインを確信。悠然とダイヤモンドを1周する選手会長が、真っ赤なスタンドの熱気とともに、チームに勢いをもたらした。

 ブランクを感じさせなかった。16日阪神戦の9回に頭部死球を受け、前日21日まで出番はなかった。復帰2打席目に快音を響かせ、守っても不安定な九里に身ぶり手ぶり、時にはハッパを掛けながら粘投を引き出した。8回には山田哲の二盗も刺した。

 16日の死球で新たな称号も得た。シーズン2桁死球は球団捕手史上初。セ・リーグでは9番に投手が入ることが多く、主にその前を打つ捕手とは危険な勝負は避けるため自然と外角中心の配球となる。過去にシーズン2桁死球を記録した捕手は古田(ヤクルト)や城島(阪神)阿部(巨人)など「打てる捕手」と認められた選手ばかり。自己最多11号本塁打で「打てる捕手」の仲間入り。広島の捕手で初めて2度の2桁本塁打を記録し、次なるターゲットは53年に門前真佐人がマークした球団捕手最多本塁打の12本だ。

 選手会長として精神的な支柱でもある。前夜の重苦しい敗戦を引きずったこの日は、前日の9回に手痛い失策をした上本の誕生日だった。試合前のミーティングで「(上本)崇司の誕生日だから絶対に勝とう」と言葉をかけ、そして白星を届けた。試合後には「いいプレゼントになったんじゃないか」と優しい笑顔を見せた。

 緒方監督は「問題なさそうなので、明日からも頑張ってもらおうかと思っています」と歓迎した。正捕手、恐怖の8番打者、そして選手会長。「三刀流」の復帰とともに、広島が勢いを取り戻した。【前原淳】