主役が戻った。左脇腹痛が回復した巨人坂本勇人内野手(29)が、7月16日に負傷して以来34試合ぶりの復帰戦でいきなり安打を放った。「1番遊撃」でスタメン出場し、1回の第1打席で右前打。4番岡本の先制24号2ランにつなげた。先発菅野智之投手(28)も力投。1シーズンの自身最多となる今季5度目、2試合連続の完封で11勝目を挙げ、2位争いの阪神にカード勝ち越しを決めた。

空白の時間を感じさせなかった。1回無死、坂本勇が阪神小野の外角球に食らいついた。一、二塁間を破る右前打で出塁すると、2死二塁から4番岡本が先制2ラン。直近3試合で2得点の打線の雰囲気が、主将の一打からガラリと変わった。左脇腹肉離れで離脱した7月16日以来、34試合ぶりの1軍復帰戦。第1打席での安打に「ホッとした」と表情が和らいだ。

ピンチでの振る舞いも、変わらなかった。1回2死満塁、エース菅野に歩み寄った。「力みすぎるな」。菅野は「マウンドに来てくれて、帰ってきてくれたんだなと実感した。いつも、いい間を取ってくれる」と感謝し、切り抜けた。

真っ黒に焼けた肌が、待ちわびた時間を証明した。08年にレギュラー定着後、長期離脱は初。負傷後のジャイアンツ球場、炎天下にゆっくり走ることしかできない状況が「初めてケガした場所だから。どのくらいかかるか…」と、もどかしかった。負傷から10日後、初めてキャッチボールを行ったが、すぐにストップ。「野球ができないのはつまらない」とこぼした。

その中で、主将としての在り方を探した。3軍のリハビリ後、帰宅すると午後4時には2軍戦を見るためにテレビをつけた。若手選手の動きを見つめ、翌日には声をかけた。今季育成から支配下となった松原には「いつも見てるよ」と話し、3軍では育成の比嘉らに質問され、惜しみなく技術を伝えた。「今できることをやるだけ」。復帰へ、はやる気持ちを抑えながらチームのために動き続けた。

坂本勇の離脱中、打線は1試合平均4・5得点から4得点に下降。それでも山本ら若手が頑張り、15勝17敗1分けとCS争いで踏ん張った。起爆剤としての期待に「残り26試合、1つでも多く勝てるように」とうなずいた。攻守で頼れる主将を先頭に、終盤戦を抜け出していく。【島根純】