悲しき勲章だ。阪神先発のランディ・メッセンジャー投手(37)は、にこりともせずに花束を受け取った。6回を投げ終えた時点で、通算1500投球回に到達。大きな拍手を浴びたが、負け展開では笑えない。そのまま今季12勝目、日米通算100勝の権利を持つことなく、ベンチに下がった。

「4点取られたというだけだよ。あそこ以外はだいたいよかったとは思うんだけど…」

魔の2回だった。投ゴロ併殺で2死走者なしとしてから悪夢が始まった。西浦に対して2ストライクからの3球目が甘く入り、二塁打。金本監督も投手コーチも「もったいない」と指摘したシーン。四球をはさんで中村に先制3ラン。仕切り直しで切るはずの投手古野に四球を与え、再びピンチを招いてもう1点失った。右腕はマウンドで必死に自分への怒りを押し殺しているように見えた。

女房役の梅野が悔しがる。「2回だけ、と言っても4点は大きい。下位でアウトを取れるところで取れなかった。ランディも(長い)年数やってきて、自分でやりたいことはあると思う。バッテリーで改善しないといけない。粘るのが一番大事なので」。詳細は当然明かせないが、配球や工夫によっては防げた4点だったとの認識だった。

快挙もかすむ。3回2死をとったところで8年連続シーズン規定投球回(143回)に到達した。継続記録としては最長を更新し、外国人投手では郭泰源(西武)に並ぶ史上最多。長年、異国の地でエースとしてフル回転してきた勲章を、勝って飾ることができなかったのがむなしい。

歴史に名を刻んだ最強助っ人は「勝っていたら、なおよかったかなという感じだね」とポツリと言い残してロッカー室に消えていった。【柏原誠】

▼阪神メッセンジャーが6回を投げ4失点。負け投手にはなったが、これで8年連続規定投球回数に到達した。外国人投手で規定投球回数到達を8度記録したのは郭泰源(西武)と並び歴代最多。また、メッセンジャーは通算1500投球回にも到達した。外国人投手で1500回以上は郭源治(中日)、郭泰源、バッキー(阪神、近鉄)に続き4人目の快挙だ。

▼通算1500投球回=メッセンジャー(阪神) 29日のヤクルト18回戦(甲子園)の6回、坂口を二ゴロに打ち取って達成。プロ野球178人目。外国人投手では68年バッキー(阪神)91年郭源治(中日)95年郭泰源(西武)に次いで4人目。初投球回は10年3月26日の横浜1回戦(京セラドーム)。