広島丸佳浩外野手(29)が37号2ランを放った。不振が続いていた主砲の20打席ぶりの安打がリーグトップのDeNA筒香に並ぶアーチとなった。マジック1で迎えたこの日、マツダスタジアムは開場以来最多の3万2950人のファンで埋まった。チームは敗れ、マジック対象のヤクルトも勝ったため、本拠地胴上げは今日25日以降にお預けとなったが、丸の復調気配は明るい材料。今日こそリーグ3連覇を決める。

広島ファンの涙雨を切り裂く打球が、ポンチョを着たファンで真っ赤に染まった右翼席に飛び込んだ。7回。丸の2点差に迫る37号2ランが出たが、反撃が遅かった。「得点圏でたくさん回ってきたので、状態うんぬんじゃなくてしっかり打たないといけなかった。ちょっと遅かったかなと」。1回無死一、二塁、2回2死一、三塁で凡退した2打席を悔やんだ。

前日まで5試合で18打数1安打。6四球を選ぶ一方で、10三振を喫していた。持ち味である低めの球の見極めができず、ボールとなる変化球にバットが回るスイングが増えていた。1つのほころびから負の連鎖が生じ、低めの真っすぐも振れなくなり、それを正そうという意識から反動をつけようとしてしまう…。珍しく続く不振に、迎打撃コーチは前日の試合前に「まずは真っすぐにいい形で振りにいこう」と助言した。

前日23日は無安打も0三振。この日も3打席まで凡退も内容は悪くなかった。迎えた7回の第4打席目。20打席ぶりの安打はリーグトップに並ぶ1発だった。DeNA三嶋の初球スライダーを捉えた。「振れるところに来た球を振れた」。甘い球に反応できたことは状態が上向いている証しだ。

気分転換も功を奏した。通常しなりがあるといわれるホワイトアッシュ材のバットを使用するが、雨中の試合が続いたことで、より硬い材質のメープル材のバットを使用。降雨の影響も受けない反発力で雨空にアーチを描いた。「いいスイングを明日の1打席目からできるように準備しないといけない」。確かな手応えに表情は曇ってはいない。

27年ぶりの本拠地胴上げはこの日出来なかった。マツダスタジアム最多動員のファンのため息で終わったが、点差を詰めたことでDeNAの勝ちパターンを投入させた。緒方監督は「最後までみんな頑張ってくれた」と前を向く。主砲の復調が何よりの収穫。今日こそ歓喜の瞬間を迎えてみせる。【前原淳】