今季限りでの退任が決まった巨人高橋由伸監督(43)が4日、広島25回戦(マツダスタジアム)で、監督通算209勝目を収めた。エース菅野智之投手(28)が今季8度目の完封でリーグトップに並ぶ15勝を挙げた。打っては、同監督が手塩にかけた岡本和真内野手(22)が5回の先制打で97打点目をマーク。阿部、長野も連続本塁打を放ち3位を死守した。レギュラーシーズンは9日阪神戦(甲子園)を残すのみとなった。

威風堂々といつも通りを貫いた。高橋監督は肌寒さをしのぐジャンパーを着込み、ベンチから戦況を見つめた。試合中は1度もベンチに腰を下ろさず、ナインと戦う姿勢もまた、いつもと同じだった。若き主砲の岡本、ベテラン阿部、長野の打棒がさく裂し「みんな、それぞれ慎之助も長野もいい本塁打を打ってくれた。いつもながら、もっと早くというのはあるけど、2点取った後の中押し、2本塁打は大きかった」。V3の王者を敵地で退けた。

前日3日に今季限りでの辞任を表明。一夜明けても、周囲は異様な雰囲気に包まれた。球場到着後の全体ミーティングで選手たちに胸の内を伝えた。「勝敗の責任を取るのが俺の仕事。悔しいけれど、現実はこうなっている。それに目を背けることはできない」。言葉を詰まらせ、目頭を熱くした。高橋監督と同じ誕生日で同級生の上原は「思うことだらけですけど、僕らは選手なので、残り2試合を最後までやることが大事。それが終わってからいろんな感情が出てくると思う」。寂しさを隠し、目の前の戦いに集中しようと後輩たちを鼓舞した。

チーム全体に宿る魂がグラウンドで躍動した。5回2死一、二塁、岡本が先制の中前適時打。4番に抜てきされ、今季全試合先発してきた若き主砲が号砲を鳴らした。8回には阿部が通算400号に王手をかける11号ソロで加勢。「監督と1試合でも多く出来るように。とにかく勝つことだけ」と、選手時代から苦楽をともにしてきた“盟友”も1発で応えた。長野も2者連続の13号ソロで続き「阿部さんになんとか続こうと思い切りいった」。ベンチで出迎える指揮官と小気味よくハイタッチを重ねた。

残り1試合が、その先への道を切り開く。4位DeNAを1ゲーム差に広げて3位をキープ。CS進出をたぐり寄せる1勝に高橋監督は「勝ち方というより、勝たないと可能性がね。今日、勝ったことも大きいですし、あともう1試合勝てるようにというところです」と最終戦へと突き進む。98年の入団以降、1日も欠けずに「背番号24・高橋由伸」が巨人にいた。ラストゲームはもっと先でいい。【為田聡史】