1点届かなかった。だが、広島安部の一撃は決して「空砲」ではなかった。5点を追う8回1死満塁、加治屋の緩いカーブを強振。弾丸ライナーが右翼ホームランテラス席に飛び込んだ。一挙に1点差。ベンチはお祭り騒ぎだ。「必死に食らいついた。最高の結果になりました」と息をはずませた。

デスパイネの3ランなどでソフトバンクの強打を見せつけられていたが「誰も諦めていなかった。点差は開いても、相手が嫌がるようなことをやろうと思っていた」。8回は6点差で迎えていた。先頭鈴木のソロに続き、安部もこの試合2発目。敗色ムードを豪快に吹き飛ばし、次戦へ勢いをつなげた。

5回には左腕ミランダから右翼席に完璧なソロ弾。「バッティングカウントだったので積極的に打ちにいきました」。第1、2戦は計1安打とバットが湿っていたが、地元福岡でよみがえった。両親らも見守った晴れ舞台で今季わずか4本塁打の男が大暴れした。

今日31日の第4戦も、活躍の予感を抱かせる。先発する野村と安部は同じ89年(平元)6月24日に、福岡県内の同じ産婦人科医院で、30分違いで生まれた。奇跡のようなストーリー。福岡には敵地とは思えない風が吹いている…広島が見せた猛攻は、敗れてなお脅威を示した。【柏原誠】