日本シリーズ第3戦はまれにみる乱打戦になった。最後は9点を取ったソフトバンクが逃げ切ったが広島も終盤に1点差まで詰め寄った。激闘の頂上決戦、広島OB、日米203勝のレジェンド・黒田博樹氏(43)は継投の難しさを感じ、先は読めないとしながらも「勝ちパターンの投手を温存できたのは広島のプラス材料」とみる。

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壮絶な試合だ。しかし率直な感想を言わせてもらえば、ソフトバンクにすれば「勝った気がしない」のではないか。6点差をつけていた8回表に5点を失い、最後は抑えの森を登板させた。9点を取って抑え投手を投げさせるのはきついはずだ。

広島にとっては負けたとはいえ、今季得意にした逆転ムードは出せた。1点差まで追い上げた粘りは4戦目以降につながると思う。対戦成績もこれで1勝1敗1分けのタイ。大きなダメージの残る敗戦とは思わない。

それにしても日本シリーズのような大舞台、短期決戦で両軍にビッグイニングが生まれる試合展開というのは、ある意味、異様だった。ソフトバンクが6回に4点、広島が8回に5点。どちらも盗塁やヒット・エンド・ランなど足を絡めた作戦はなかったのに、こんな展開になった。

そこに「継投の難しさ」を感じてしまう。ソフトバンクの8回は走者がたまっていっても加治屋を代えなかった。もちろんベンチ、当事者にしか分からない理由があるのかもしれない。だが安部に満塁弾を許した後、嘉弥真が出てきたことを見れば、例えば野間のところで継投してもよかったのではないか。広島岡田が4失点した6回も同じような感じで引っ張った印象は受けた。どちらも本塁打で大きく失点したので、難しかったのは間違いないのだが。

乱打戦の中で広島サイドのプラス材料になるのは勝ちパターンの投手をほとんど起用しなかった点だろう。一岡が投げたぐらいでフランスア、中崎は投げなかった。実質2日間、休めた形だ。森、武田らを使ったソフトバンクに比べて有利なはずだ。

逆に少し心配なのはこの日4三振を喫した丸に元気がないこと。田中、菊池が出て、丸、鈴木でかえす。鈴木は調子が出てきたが広島が得意とする本来の形には、まだ、なりきれていない。

さらに言えばデスパイネに右方向に本塁打されたのは広島投手陣にとって嫌な感じだろう。内角球をファウルさせてカウントをかせぎ、外角球で打ち取る。長打を防ぐパターンの投球が通用しないのでは、と考えるだろう。

元々、右方向にも打てるデスパイネだが、あの打席の前までは引っ張り中心だった。それが、あの1発で右にも打てる自分の形を思い出したかもしれない。今後、脅威になる可能性はある。

いずれにしてもマツダスタジアムでの2試合は投手戦だったが、3戦目で一気に両軍打線にスイッチが入った感じだ。先はまったく読めなくなってきた。(元広島投手)