今度こそ、本当の“生涯ハム”宣言だ。海外フリーエージェント(FA)権を保有する日本ハム宮西尚生投手(33)が9日、札幌市内の球団事務所で記者会見を行い、権利を行使せずに残留することを表明した。出来高払いを含む2年総額約5億円(金額は推定)で、球団側と合意。「僕の腕が使えるまではファイターズの一員としてプレーしたい」と誓い、23年に開業する新球場でのプレーを思い描いた。

宮西が、揺れる心に決別した。33歳という年齢を考えれば、FA権行使の最後のチャンス。「これだけ投げていて、いつ爆発するか分からない左肘。その中で球団は少しも不安視せず、いい評価をしてくれた。手術をした後も、自分にとってベストな野球人生を送って欲しいと言っていただいた。安心してファイターズでやっていけると確認できた」。残留を決断し、表情は晴れやかだった。

1年前の記者会見を思い出すと、少し照れた。「去年は『左腕をささげるつもり』と言って残りましたけど、その『つもり』がなくなり覚悟を決めた」。55試合に登板した今季は4勝3敗37ホールドで、2季ぶり2度目となる最優秀中継ぎのタイトルを獲得。入団1年目から11年連続で50試合以上に登板し、通算最多ホールドの日本記録を更新した。吉村ゼネラルマネジャー(GM)は「彼にファイターズでユニホームを脱いで欲しいという気持ちは変わらない。球団側と本人の考えも一致した」と、最強左腕の残留にひと安心だ。

会見に先立ち行った球団側との話し合いで、竹田球団社長の言葉に胸を熱くした。「若い選手の目標となる数字を、2度と破られない数字を作ってくれ」。正当な評価がされにくい中継ぎというポジションで、自身も今季限りで引退した中日岩瀬の記録に励まされ、目標としてきた。

23年開業予定の新球場の完成予想図を見て「あそこで投げたいと、新たな目標ができた。イメージは…全然わかないよ」と苦笑いしながらも「新しい球場で1試合でも投げられれば、この球場で投げたと将来思える。俺らしい目標でしょ?」と、おどけた。その時38歳。不可能な目標ではない。そして北の鉄腕は、伝説になる。【中島宙恵】