迷いはなかった。阪神中谷将大外野手(25)が決めていたルールは超積極的。カウントにかかわらず「ファーストストライクを打つ」だった。秋季キャンプで行われた紅白戦の1回1死三塁。制球が定まらない青柳のボールを見極めて3ボール。1球見てもいい場面だが「打っていくと決めていたので」と振り切った。会心ではなかったが、先制犠飛をセンターへ上げた。

1死一塁で迎えた3打席目も貫いた。投手飯田に対し3ボールとなると、4球目の146キロをスイング。三飛に終わったが、選ぶよりも打つという積極性が光った。「打たないと課題が見えてこない。しっかり打たないといけないので」と意図を説明。とらえきれなかった悔しさと課題が、次へとつながるはずだ。

矢野監督も姿勢を絶賛した。ノーサインで指示もない紅白戦。「今はうまくなるためにここに来てんのにさ、見逃しても何も魅力を感じひんやん。ガンガン打ちにいって自己アピールをどんどんして、自分がどれだけうまくなるんやってことをやってほしい」と笑顔。第1打席の犠飛を振り返り「真っすぐやろっていうところで、あれは犠飛でもまあまあ価値もあったと思う」と評価した。

レギュラー奪取を期待された今季は77試合で打率2割3分、5本塁打に終わった。1発で仕留める確実性が課題のひとつだ。だからこそ矢野監督は打席を評価し「いつも言っているように、そういうところにチャレンジして自分がどううまくなるかというところの打撃やと思うから」と続けた。和製大砲が完全覚醒へ。超積極的な打席は、次のステージにつながっていく。【池本泰尚】

◆今季の中谷 昨季20本塁打を放ち、キャンプから中堅のレギュラー獲りが期待されたが、オープン戦は打率1割4分3厘と大不振で、開幕1軍から外れた。5月22日にようやく今季初昇格。同27日の巨人戦で野上から今季初本塁打。交流戦では先発出場も多かったが、徐々に調子を落とし打率は2割4分前後と停滞。8月27日に出場選手登録を抹消され、再び1軍に昇格したのは9月16日。再昇格後も目立つ活躍はできず、今季は77試合で打率2割3分、5本塁打に終わった。