日本ハムドラフト1位の金足農・吉田輝星投手(17)が15日、秋田市の全高143メートルを誇るポートタワー・セリオン(道の駅あきた港)で仮契約を行い、サクセスストーリーの第1歩を踏み出した。球団の粋な計らいで、北の大地へ船出する男にふさわしい場が提供された。金足農からほど近い、日本海を臨む港湾施設を終日貸し切りにする、規格外の契約交渉を行った。

仮契約を終えた吉田は、金農カラーの紫一色にしつらえたひな壇に、1人で登壇した。待ち構えた報道陣を前に「甲子園ではみなさんがたくさん応援してくれて力になった。秋田の人に喜んでもらえるよう、1軍で投げることを目標にして、球界を代表する選手になりたい」と決意を示した。

晴れの会見場は、江戸時代に蝦夷地(えぞち)と交易する北前船(きたまえぶね)の寄港地でもあった土崎港。そこに全高143メートルでそびえ立つ、星の形をした巨大タワーのてっぺんで、フォトセッションが行われた。輝星の名の通り、輝く星に一番近い場所にまで上がった吉田は「(北海道は)秋田より雪の量が多くて海鮮料理がおいしいと聞いている。かにが好きなので楽しみにしています」と、主戦場となる北に向かって、侍ポーズを決めた。

タワーと屋内緑地施設を貸し切りにした大がかりな会見に、球団関係者は「昨年の清宮(幸太郎)の時は東京の明治記念館でした。父克幸さんが活躍した秩父宮ラグビー場と、自身が活躍した神宮球場に隣接する施設。吉田君にもゆかりの地から旅立ってもらいたいという願いから場所を探していました」と経緯を説明した。吉田は「農業高校なので普段から木とかは見ていますが、農業高校生から見てもすごいきれいな施設だなと思います」と喜んだ。

前日には明桜のライバル山口航輝(18)がロッテと契約をかわし、吉田との再戦を熱望したが「今のままでは彼を完全に打ち取れない。成長して打ち取れるようになりたい」。秋田の星から北海道の星へ、歩み出す。【下田雄一】