プロ野球の発展に大きく貢献した野球人に贈られる「正力松太郎賞」の選考委員会が20日、都内で開かれ、ソフトバンク工藤公康監督(55)が選ばれた。3年ぶり3度目の受賞は、王貞治球団会長の4度に次いで、原辰徳氏、秋山幸二氏と並ぶ2位タイ。チームを2年連続で日本一に導いた手腕が評価された。

選考委員の座長を務める王会長が、評価の理由を説明した。「いろいろと意見が出ましたが、シーズン2位から勝ち上がって日本一になった。シーズン中も先発をリリーフに回したり、やりくりして2位になった。今年のシリーズは、内容のある、語り継がれるシリーズになる」。日本一が、決め手になった。

日本シリーズでの采配が、選考委員の心を捉えた。工藤監督は第5、6戦でベテラン内川に送りバントを命じた。第6戦では続く西田がスクイズを決め、決勝点を挙げた。選考委員のジャーナリスト門田将隆氏は「スターの主力に2日続けて送りバントをさせる。勝負の厳しさを見た」。武田を「第2先発」としてリリーフ待機させるなど、短期決戦向けの戦いぶりが光ったという。

対抗馬には、巨人以外で初めて3年連続セ・リーグ優勝した広島緒方孝市監督が挙がった。中西太委員、杉下茂委員も高評価を与えた。だが、広島OBの山本浩二委員から「日本一にするべき」との意見が出たことからも、工藤監督に軍配が上がった。緒方監督には「来年に期待する」との意見で一致した。

他に、中西委員から西武をパ・リーグ優勝に導いた辻発彦監督も候補に挙げられた。史上初となる3度目のトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)を達成したヤクルト山田哲人内野手については、王会長が「十分評価に値するが、正力賞にふさわしいかどうか。競技者だけでなく、今年一番優れていたか。ヤクルトが日本一になっていれば(受賞は)あった。正力賞は(選考の)パイが大きい」と説明した。

投打二刀流で米大リーグを席巻し、ア・リーグの新人王に輝いた大谷翔平投手については、議論に上らなかった。

正力賞の賞金は500万円。メダルも授与される。