日刊スポーツの読者のみなさま、こんにちは。山田です。今回は「審判」がテーマです。現役時代は、さまざまなタイプの審判と顔を突き合わせました。
山田「えっ、今のストライクでしょ?」
球審「いや、ボール。半紙1枚だけ外れてる」
みなさん、半紙1枚の厚さって、人間の目で測れるとは思えないでしょ(笑い)。でも、その審判に言われると、こっちも引かざるを得ないんですよ。
不満げな態度をみせると「この若造が…」となって、そこから際どいコースを突いた球は、すべてボール、ボールですから。
また、ある球審は若い打者に「お前っ、誰が投げてると思ってるんだ。山田だぞ。はよ、打席に入れ!」と注意する。そういった名物審判がいた。
私が一番だと思ったのは、パ・リーグ審判部長だった藤本典征さん。立ち居振る舞いから、正確性まで、この人の判定にはクレームをつけることができなかった。
さて、今シーズンから採用されたのが「リクエスト制度」です。レギュラーシーズンでリクエストがあったのは、計494件(セ251、パ243)、判定変更は32・8%の162件。全件の50%が一塁、25%が二塁のプレーで、審判自らリプレー検証したのは40件だったという。
なかでは、ちょっと待てよと言いたくなるシーンもありました。9月27日阪神-DeNA戦(甲子園)の5回2死一塁で起きたプレー。阪神大山の左中間への打球に、ダイビングを試みたDeNA乙坂がノーバウンド捕球と勘違いした。
このとき杉永三塁塁審は「セーフ」のジャッジをしているのに、乙坂は左手首を痛めてうずくまったままで、周りからインプレーを指摘されたが、大山はホームイン。ランニング本塁打です。ラミレス監督がリクエストを要求したが、「セーフ」は覆らなかった。
このプレーに疑問が残ったのは、仮に「アウト」のジャッジをしたとして、リクエストで「セーフ」になっていたら、どうなったのかという点です。もしアウトと判定された場合、大山は二塁で止まっていたかもしれないが、リプレー検証で落球していたから「セーフ」というなら、三塁までいけたのに…といったアピールもでかねない。
つまり、走者を置いた際どいプレーは、すべて「セーフ」でインプレーにしておかないといけないのではないのだろうか。
まぁ、なんでもかんでもリクエストというのには違和感がありますがね。審判の技術はいらないのか? ってなる。ビデオで判定しづらいときは、我々が決めましたっていうのもありだよね。かつては審判にもスターがいた。審判のジャッジにもドラマがあった。それも、野球だと思うんだけれど…。(日刊スポーツ評論家)