朝イチで負けた…15日朝8時半、都内の大学に到着。「学生野球資格回復制度研修会・2日目」参加者137人の一番乗りを待つつもりが、すでにDeNA前GMの高田繁氏(73)がいた。「8時に来たよ」。気迫に圧倒されつつ潜入した。

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元プロの猛者たちが教室を埋める。かつての戦友同士でワイワイやっているが、講義が始まると一斉にシーン。さすが、規律には厳しい。ボールペンのノック音があちこちで響く。不意にくしゃみが出た。相当気まずい。今年で6年目の厳粛な研修会。1000人超が3日間集中講義を乗り越え、資格を得てきた。

「それでも今、現場で指導しているのは約50人」と講師が現実を突きつける。誰もがすぐに高校野球の監督に! ではない。ひとまず資格取得したい受講者が多いのが現実か。昼休み、学食で一緒に並んだ新垣勇人氏(33=今季で日本ハムを引退)もそんな1人。「今後、学生と接する機会もありそうですしね」。来年から社会人野球・東芝のコーチになる。

午後の講義が眠いのは、誰のせいでもない。顔をつねる。徐々に緩む教室が再び締まったのは午後2時。講師の筑波大・川村卓監督(48)が「約40人の野球チームへの初期投資額」をスクリーンに示すと、受講者全員が一気に顔を上げた。その額、概算で375万円。誰かが「高い…」とつぶやいた。

のべ6時間に及ぶ講義は午後4時半に終了。疲労の色は濃く、みな足早に教室を出る。慌てる私に、元横浜投手の森大輔氏(36)は立ち止まり「自分はプロで活躍できなかったけれど、野球人口を増やすことが球界への恩返しになるのかな」と穏やかに話してくれた。「寒いですね」「地元の能登はもう雪が降りました」「明日の研修も頑張ってください」。いつの日か“森監督”に再会したいと思い、見送った。【金子真仁】