丸はアーノルド・パーマーだった!?

巨人内田順三巡回打撃コーチ(71)が28日、神奈川・川崎市のジャイアンツ球場を訪れ、ファーム合同自主トレを視察した。

寒空の下、グラウンドで汗を流す若手を見ながら、11年前の記憶をたどった。「丸のことは昔、アーノルド・パーマーって呼んでたんだよ」。丸が高校ドラフト3位で広島へ入団した08年当時、内田コーチは広島の打撃統括コーチを務めていた。「最初見た時はまだ線が細くて、打撃も走塁も粗削りだったね。スイングした後に高く腕を上げてグニャッとするから、それじゃアーノルド・パーマーみたいじゃねぇかって」。世界ゴルフ殿堂入りを果たした、米国ゴルフ界の“キング”を引き合いに、当時の丸の印象を表現した。それでも「体の軸がしっかりしていたし、ボールにコンタクトするのはうまかったね」と、のびしろは感じていた。

孤高の天才打者の存在も成長を促した。丸は打撃練習を行う際に「シュッ!シュッ!」と声を出しながらスイングする。内田コーチは「前田の影響かな。前田も水谷(実雄)に影響されたんだと思う。打つときに息を吐くことで、力が入るんじゃないかな」と理由を語る。「前田はあまり口数の多い方じゃなかったけど、丸のことは気にかけていたね」と、天才と呼ばれた前田が、若き日の丸に注目していたと振り返った。

過去の記事を検索すると、12年1月15日の本紙広島版の1面に「前田が丸を自主トレのパートナーに指名」との記事があった。当時40歳の前田が、室内練習場で若手同士でトレーニングする22歳の丸を呼び寄せ、ノックやティー打撃をともにしていた。そこで前田は丸を「全盛期の篠塚さんみたいだね」と首位打者に2度輝いた名打者を例に、素質を評価。高卒、左打者と共通点もある後輩へ期待をふくらませていた。

時はたち、「アーノルド・パーマー」「全盛期の篠塚」と評された丸は広島の猛練習にもまれ、2年連続のセ・リーグMVPを獲得する打者となった。そして、30歳を迎える今年はFA移籍した巨人での新シーズンへ調整を進める。新井、阿部らを指導した名伯楽、そして天才打者から見込まれていた力を、新天地でも証明する。【桑原幹久】