東都大学野球リーグの亜大が3日、春季鹿児島キャンプを打ち上げた。この日は悪天候のため急きょ練習を休養日にあて、東京への帰路についた。

2月9日から23日間に及ぶ長期キャンプで成長を見せたのは、松本健吾投手(2年=東海大菅生)と松本晴投手(1年=樟南)の松本コンビだ。

松本健はオープン戦3試合に先発し、14回を7安打。奪った三振は12で失点はわずか1と順調な調整をアピールした。

「このキャンプではピッチャーとしての考え方や自分のタイプを確立できました」と手応えを話す。高3夏の甲子園では、最速145キロのストレートとスライダー、スプリットを武器に4強入りに貢献した。昨秋はリーグ戦デビューを果たすも、中大戦に先発し2回を2安打1三振、失策や3四死球で1失点(自責点は0)。大学野球のレベルの高さに圧倒された。

「甲子園で空振り三振を取っていた球は変化球。僕のストレートはスピードあっても球の力が弱い。これじゃあ通用しないと痛感しました」。マウンドでは打たれる恐怖からストレートを投げられず、変化球でかわす投球に。悔しいリーグ戦デビューとなった。

貪欲に取り組んだ。松本健を変えたのは知人の「自ら求める」というアドバイスだった。好調はずっと続くことはない。だからこそ、ずっと向上心をもたなければ成長しない。やらされるのではなく、自ら考え求め、行動することが成長につながる。

「昨秋の登板を悔しいままで終わらせず、その経験を生かしたい」と心に決めた。この冬は、得意のスライダーとスプリットを封印。ストレートとカーブだけを投げ込んだ。キャンプに入りフォームを調整。これまでの投球をビデオで分析した。同級生に先輩と、積極的に意見を聞き、周りの声に耳を傾けた。配球も勉強した。オープン戦では打者の反応を見て、次のボールを選択した。打者心理を読み、考えて投げることを心がけた。

フォームの安定で球の指のかかりも良くなり、球の力が増した。ストレートで空振り三振が増え、これまで多少甘く入った球もファウルになるように。最速も自己最速を1キロ更新し、146キロを計測した。

「昨年とは全然違います。ストレートがあっての変化球というスタイルを確立できたと思います」と目を輝かせた。

松本健の背中を追うように、キャンプではチームに合流したばかりの新人、松本晴も躍動した。3月2日のホンダ熊本戦では、オープン戦3試合目にして大学初先発。卒業式で4日間、チームを離れた後での登板で「体のキレがなくて、ボールが走らなかった」と浮かない顔を見せるも、3回を投げ2安打4三振、無失点に抑えた。

昨夏は、鹿児島県大会4試合で57奪三振を奪った怪腕。プロから注目されながら「大学でもっと成長してからプロを目指したい」と亜大進学を選んだ。

「高校ではランナーを出してから打たれて失点することが多かったけど、今日は粘れてよかったです」と手応えをつかんだ。

1月下旬に入寮し、約1カ月で体重は5キロ増。食事トレーニングで体力をつけ、全身を使って投げるフォームで球の強さが増した。「球を強く押し出せるようになり、球に力がついてきた。高校時代の三振はほとんどスライダー。でも、今はストレートでも三振が取れるようになったのは成長です」と、胸を張る。「この4年間でもっと成長して、ドラフト上位でプロに入りたい」と力強く語った。

1学年先輩の松本健は「晴はストレートで空振りがとれるしコントロールもいい。負けてられないです。でも、2人でチームを盛り上げていければいい」とコンビで活躍を誓った。3月29日に開幕する東都大学リーグ。亜大の松本コンビから目が離せない。【保坂淑子】