19年のカープは下位打線も息をつけない。広島会沢翼捕手(30)が日本ハムとのオープン戦(マツダスタジアム)でまたもマルチ安打をマーク。オープン戦打率は規定打席未到達ながら、7割6分9厘。正捕手として投手陣を好リードするだけでなく、下位打線で強打の捕手として打線に厚みをもたらしている。攻守両面で円熟期を感じさせるコイの正妻が、球団初4連覇への旗手となる。

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3打数2安打でも、打率を落とした。試合前まで打率8割と絶好調の会沢が、オープン戦4度目のマルチ安打。日本ハム開幕投手の上沢から2回は真っすぐを、4回はカーブを2打席続けて中堅前に落とした。バットを振り抜いているからこそ生まれた安打。第3打席に一邪飛に倒れ、打率はわずかにダウン。だが、驚異の7割6分9厘。開幕前に早くも“確変”モードに入った。

「投手と勝負できている。開幕も近づいているので、自分が納得できる内容を求めていきたい。率は気にしていない」

2月24日のオープン戦初戦(DeNA戦)で猛打賞のスタートを切ってから、打ち出の小づちのように安打を量産している。試合前には緒方監督から「今日は4番でいくか? (ダイエーなどで活躍した)城島のようだから、今度からアツではなくジョーと呼ぼうか?」とからかわれたほど。スタメン出場全5試合で安打を放ち、先発したゲームで出塁できなかったのは、この日の3打席目が初めて。複数打席立った試合では、すべてマルチ安打を記録している。

昨季までバッテリーをほとんど組んでいなかったジョンソンを含め、今年は主戦級をけん引する絶対的正捕手と期待される。この試合は先発野村を好リードし、すでに開幕ローテ入りが決まっている大瀬良、ジョンソン、床田、野村の4投手全員に白星をつけた。理想の捕手像を「勝てる捕手」とする会沢は言動で引っ張る。「昨日はピリッとしなかったので、今日はいい試合ができて良かった」。投手陣だけではない。選手会長として、チーム全体をまとめる覚悟でいる。

オープン戦打率に注目が集まるが、本人は冷静だ。「いいときもあれば悪いときもある。内容を求めていきたい」。今はまだ準備期間に過ぎない。確変中にも足もとを見つめる選手会長が、確かな足取りで4連覇に挑むシーズン開幕を目指している。【前原淳】

▽オープン戦での高打率 規定打席到達で打率5割以上だったのは、00年イチロー(オリックス)が最後。同年は初出場から6試合目まですべてヒットを打ち、15打数12安打の打率8割。最終的には、出場12試合で31打数17安打の打率5割4分8厘を記録した。近年の規定以外の選手では、01年大道(ダイエー)が17打数11安打の6割4分7厘、06年井上(ロッテ)が20打数13安打の6割5分の高打率をマークしている。

▽シーズン高打率の捕手 捕手のシーズン最高打率は12年阿部(巨人)の3割4分で、首位打者は65年野村(南海)91年古田(ヤクルト)前記阿部の過去3人だけ。また広島の捕手では96年西山の3割1分4厘が最高で、3割以上は西山しかいない。