「巨人の顔」が、憧れのスーパースターの前でメジャークラスの実力を披露した。坂本勇人内野手(30)が、マリナーズとのプレシーズンゲームで3安打3打点の大活躍。

6度の2ケタ勝利を含むメジャー通算93勝のリークから左中間席へのソロ本塁打も放ち、12年のプレシーズンゲーム以来の対戦となったイチローに成長した姿を印象づけた。チームは逆転負けを喫したが、日本を代表する内野手の意地を示した。

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あのイチローとプレーした胸の高まりが、自然と言葉に表れた。試合後、坂本勇の口からはイチローへの思いがあふれた。

坂本勇 一緒にプレーできたのは財産です。球場の雰囲気が変わるのはすごいこと。オンリーワンの方だと思います。

憧れのスーパースターにバットで「坂本勇人」を印象づけた。1点差の3回1死二塁、1-2から低めのチェンジアップを技ありの同点打。1点リードの5回にも0-2からのチェンジアップを左中間席に運んだ。ともに、通算93勝のリークの勝負球を仕留め、右翼を守るイチローもリプレー映像に視線を向けた。

7年前、イチローと交わした一言が脳裏に焼きついた。12年のマリナーズとのプレシーズンゲーム。遊撃を守った坂本勇は勇気を振り絞って、攻守交代時にあいさつした。近くですれ違えるようにイチローがベンチを出るタイミングに合わせ、直立不動で声を出した。「お疲れさまです」と頭を下げると、「おいっす~」と笑顔で返された。

坂本勇 めちゃめちゃ緊張したんですけど、イチローさんが気さくに返してくださって。あの瞬間は忘れられないです。

この日の試合前練習中、あらためて、ベンチから現れたイチローに「初めまして、坂本です」とあいさつした。イチローからは「初めましてじゃねぇだろ」とツッコミを受けたが、覚えてくれていたことに感激した。「認識していただいていたので、すごくうれしかった。気さくに声をかけていただいて、本当に感動した」と声を上ずらせた。

メジャーの猛者相手に、日本野球のプライドも示した。3発を放ったマリナーズに対抗し、技とパワーを凝縮した3安打を集め、原監督から「日本の球界を代表する選手として、素晴らしい役割を果たしたと思います」と称賛された。坂本勇は「イチローさんが打席に立つ姿や守る姿を見られるのは幸せなこと。明日も少しファン目線で見たいです」と野球少年のような目で語った。【久保賢吾】