主将で4番の日本ハム中田翔内野手(29)が、ひと振りで決着をつけた。オリックス1回戦(札幌ドーム)の10回1死満塁。左中間スタンドへ、劇的サヨナラグランドスラムをたたき込んだ。前打者2人が申告敬遠で歩かされ、燃えた。開幕戦でのサヨナラ満塁本塁打は、史上3人目の快挙。チームは4年ぶりの開幕戦白星となった。

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中田の放物線が、超満員の札幌ドームを総立ちにさせた。「打った瞬間に確信したね」。延長10回1死満塁。燃える主将が、サヨナラ満塁本塁打で熱戦にけりをつけた。目の前で西川、近藤が申告敬遠されていた。「あるとは思っていたけど、目の前で見たら、ナメてるのかなと思って、すごく気合が入りました」。3球目を左翼ファウルゾーンに打ち上げたが、犠飛を避けて小田は捕球しなかった。「捕らないだろうと思っていた。犠飛ではなく、本当に1発狙いにいっていた」。チームに4年ぶりの開幕戦白星をもたらした。

試合前には円陣で声出し役を務めた。主将2年目。みんなの緊張をほぐそうとして「143試合の中の、たかが1試合目」ということを伝えたという。ただ、試合展開は序盤から重かった。中田も8回までの4打席は全て凡退。「ああやって言ったのに、自分が一番、緊張していたかも」と冗談めかしたが、最後は有言実行の一打となった。

4月に30歳を迎える。「もう年ですからね」と笑うが、「体の硬さとかも、やっぱり変わってきている」と肉体的な変化も感じている。試合前練習時は入念にストレッチを行い、試合後の体のケアも以前より重視。食生活は「暴飲暴食もやめて…まあ、それはあまりないけども」と豪快に笑うが、昨オフには球団と3年契約を結んだ。「30歳から脂が乗ってくるよと言う人もいれば、30歳から衰えてくるよと言う人もいる。自分が、どう進んでいくか分からないけど楽しみ」と、伸びしろにも期待する自分がいる。

絶対に取りたかった開幕戦を制した。「この初戦は意地でも取ろうと、みんなから声も上がっていた。勝てて良かった」。栗山監督も「見た目以上に真面目なところがあるので、いいスタートを切らせてあげたかった。攻めきれない中で、ワンチャンスをものにしてくれた」と目を細めた。チームも中田も最高のスタートを切った。振り返ってみれば、たかが1試合ではないほどのインパクトを持つ勝利となっているはずだ。【木下大輔】