午後4時49分、12球団最速で令和初の白星を手にした巨人菅野智之投手に笑顔はなかった。

完封目前の9回に3連打で失点。令和初完投を飾っても、3分後に上がったお立ち台の第一声で「悔しいです」と発した。「(リリーフに)ブルペンで準備させて、申し訳ないです」。チームは10連戦の5戦目。元号をつなぐ大エースは内容も最上級を求めた。

新時代の幕開けも、巨人の背番号18がマウンドで輝いた。菅野が誕生する年の平成元年4月8日、開幕戦で平成初完投を飾ったのは背番号18の桑田真澄だった。運命の巡り合わせかのように、桑田に並ぶ通算22度目の2桁奪三振。12球団最速での令和初奪三振をスタートに1000奪三振も達成し、節目の1日を記録で彩った。

菅野 もっともっと記録を残して、時代が変わった節目、次の時代に初勝利を挙げた人が『菅野は令和で最初に勝った人だよ』と言ったら、ピンとくるような成績を残したいです。

2年連続沢村賞を獲得してもなお「もっと」を求める男は屈辱を力に変えた。平成ラスト登板だった4月25日ヤクルト戦。初の3者連続弾を浴びた試合直後、小林と反省会を開いた。翌朝の練習、球場への移動の車中では後部座席でタブレット端末で映像をチェック。「見たくないですけど…」と言いながら、「まだやるべきことがあります」と進化への種を採取した。

反省点の1つだった配球には早速変化を加えた。120キロ台のパワーカーブを初球、勝負球にも使用。直球、スライダー中心の王道スタイルを逆手に、竜打線を惑わせた。原監督は「やられたらやり返すのがプロ」と快投とともに、反骨心を評価した。【久保賢吾】