広島鈴木誠也外野手(24)が“神”になった。5点ビハインドから8回に自身ソロで反撃の口火を切ると、9回には4得点の猛攻の火を付けた。

仕上げは同点の10回だ。1死一塁からヤクルト中尾の低めの球を強振。鋭い弾道はセンターバックスクリーンに突き刺さった。大歓声の中、本塁で待ち受けるチームメートの姿に笑顔を見せた。

最大で5点のビハインドを背負った。それでも一丸で粘って逆転した。今季は4番としての自覚と責任を強くする。「チームが重い空気のときに流れを変えられる打撃をしたい。昨年は丸さんに頼っていた。それを今年は僕が、という思い」。5回から4打席連続で打点を上げ、逆転劇の主役になった。お立ち台では3度「サイコーでーす!」と叫んだ。今季はお立ち台で封印していた決めぜりふ。重みを感じた勝利だった。

打率3割4分7厘、32打点はいずれもリーグトップとなり、13本塁打もトップタイ。3冠王にも「正直、どうでもいいです。それよりも勝つことが一番」と興味を示さない。だが、ブレークした16年に「神ってる」とたたえた緒方監督は「すごいの一言やね。さすがカープの4番。こういう試合を最後、決めてくれて」と驚嘆した。今ではもう「神ってる」ではない。野間は「あいつとは生まれた星が違う。あれはもう“神”ですよ」と舌を巻いた。

4連勝で2位タイに浮上し、首位巨人に1ゲーム差。若き主砲は冷静に足元を見つめる。「チーム状態がいいですし、いいときに勝っておきたい。自分たちでミスをして流れを悪くするのではなく、いいときこそ集中して、1戦1戦できればと思います」。まだ24歳ながら、すでに4番の風格十分。首位巨人から4チームが1ゲーム差の中にひしめく。快進撃のコイが混セを演出した。【前原淳】