基本、謙虚な男が自画自賛した1発だった。ロッテ鈴木大地内野手(29)は2点リードの7回2死満塁。2ボールから楽天美馬の144キロを右中間へかっ飛ばした。ぎりぎりスタンドへは届かなかったが、新設されたホームランラグーンへイン。試合を決定づけ「あんまり言いたくないんですけど、最高の仕事ができたと思います」と照れた。

人生2度目のグランドスラムだ。1度目はプロ2年目の13年8月に、西武大石から。現役だった井口監督と、1イニング2本のアベック満塁弾をお見舞いした。当時、鈴木をベンチで隣に座らせ、内野守備や打撃のノウハウを伝授していた指揮官は「それ以来? そうですか?」ととぼけながら「大地がいいところで打ってくれた」としっかりたたえた。

がむしゃらに定位置をつかんでいる。16年は遊撃、17年は二塁、昨季は三塁で3年連続全試合出場。今年はキャンプから挑戦した一塁でも出場し、練習では外野でノックも受ける。「それだけ選択肢があるのは悪いことじゃない」と腐らず多数のグラブを使いこなすが、4月末から出番はもっぱら指名打者。昨年は満塁19打席で1安打だった。今季は6度の満塁機で既に2度、快音を響かせた。

2死から藤岡、今季初安打の江村、そして荻野があきらめずにつないでくれた打席。ダイヤモンドを1周してベンチに戻ると、バットを見詰めて声を掛けた。「バットに感謝してました。それ以上、特に意味はないですけど」。イニング間の「大地」コールには、グラウンドに出て帽子を取ってスタンドのファンへ会釈。そういえば学生時代から、打席に入るとき審判に一礼するのがルーティンだった。律義だ。

だがやっぱり、謙虚なのでおごらない。「今日は余韻に浸ります。でも今日は今日なので、12時を過ぎたら明日1日、どう頑張るかだけを考える。その積み重ねです」。言葉に、プレーに、ファンに愛される人間性が宿っている。選手会長に率いられ2位タイ浮上だ。【鎌田良美】