まるで少年のように、跳び上がって喜んだ。阪神藤川球児投手(38)はグラブをたたいて、ぺろっと舌を出して照れる。7回のピンチを乗り越えた男が、安堵(あんど)の表情でマウンドを降りた。

「地道に1つずつ成果を出していくと決めている。地に足つけて戦っていくしかない。(自分たちは)立ち止まってはいられない」

1死から坂口、青木に連打を浴び、迎えるは3番山田哲。見逃し、ファウルで追い込むと3球勝負。内角直球にタイミングが合わずに空振り三振。あとひとつ-。2死になっても焦らない。何度も修羅場をくぐってきたベテランは落ち着いていた。4番バレンティンには5球連続ストレート。カウント2-2から外角低めにフォークを落とした。バットが空を切るのを確認すると、梅野に感謝の合図を送った。「自分のボールというよりは梅野の配球に助けられた。(梅野は)本当に頼もしい存在になってきてます」。

試合中のブルペンでも1球ずつ「自分なら、ここに投げるかなぁ」と配球を考えて伝え、若手に寄り添うだけに、しっかりと女房役の成長も感じ取っている。

味方が勝ち越して今季2勝目をゲット。2軍再調整後は9戦連続無失点と波に乗る。矢野監督は「球児もあの場面、思い切って向かっていく投球をしてくれた。今後もああいう場面での登板になる。年は取っていくけど、ああいう真っすぐは球児の投球のバロメーター」と絶賛した。チームスポーツは役割分担。若手が躍動する裏では、藤川のような経験豊富なベテランが背中を押している。【真柴健】