阪神が「超人」糸井嘉男外野手(37)で接戦を制した。1-1の7回2死三塁で中前に勝ち越し打。続く大山の左前打が失策を誘うと、幸せのイエローカラーを手首につける背番号7は一塁から激走して滑り込み生還した。膝のコンディションが万全でない中、懸命のプレーでチームの2連勝に貢献。直前の広島戦3連敗のダメージを打ち消し、貯金を2とした。

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黄色く染まった甲子園のスタンドが激しく揺れた。試合を決めたのは苦しむ糸井のバットだった。1-1と同点で迎えた7回2死三塁。ヤクルト・ハフが投じた高めの変化球をひっぱたいた。打球はセンター前に勢いよくはずみ、三塁走者上本がホームイン。「とりあえず声援に応えたくて。勝ちにつながる一打を打ちたかった」。5月8日ヤクルト戦以来、48打席ぶりのタイムリーが最高の場面で飛び出した。

虎の超人は足でも魅せる。糸井のタイムリーの直後に大山が左前打を放つと、左翼手バレンティンがファンブル。もたつく合間を縫って一塁走者の糸井は、一気呵成(かせい)に本塁へ突き進んだ。鬼の形相で滑り込み左手でベースをたたいた。「大山の当たりでかえろうと、いいスタート切れました」。快打のち激走-。ゲーム終盤の甲子園は完全に糸井劇場だった。

決してベストな状態とは言えない。18日広島戦では、4回守備で鈴木のファウルフライを追ってフェンスに激突。好捕で球場を沸かせたが、古傷の膝を痛めたと見られ、大事を取ってベンチに下がった。痛手を負いながらも責任感の強い超人は出場を続けている。この日の試合前には清水ヘッドコーチとマンツーマンでロングティーを実施。本来の形を取り戻そうと必死に汗をかいた。矢野監督は「底は抜けてるんじゃないのかな」とトンネルは抜けたと見る。

借金危機からの2連勝で貯金2となった。お立ち台の糸井は「いやもう、ほんまに勝ちたい。その一心でやってますので、大きな声援またお願いします!」とスタンドに呼びかけた。矢野監督も「2つ取れたので、もちろん、明日も勝つ気満々で行きます」と宣言。上位進出を狙う矢野阪神にとって糸井の復調は何よりの朗報だ。【桝井聡】