お帰り、グッチ!! 大腸がんからの完全復活を目指してきた阪神原口文仁捕手(27)が4日に開幕する「日本生命セ・パ交流戦」のロッテ戦(ZOZOマリン)から1軍昇格することが3日、分かった。

この日、チームに合流し、夕方に千葉市内のホテルに入った。昨年末に大病が発覚。1月末に手術して入院し、2月の春季キャンプは参加していなかった。5月上旬に2軍で実戦復帰。昨季、代打の切り札として活躍した男が勝負のパ・リーグ戦に加わる。

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衝撃のがん告白から4カ月少々で、ついに1軍復帰を果たした。貯金5の2位で交流戦に突入するタイガースが原口の戦列復帰を決断した。この日、1軍に合流し、夕方に千葉市内のホテルで対応した。

「かなりの緊張感と楽しみワクワク、両方あります。来たか、と。すぐ緊張が一番ですね」

道なき道を歩いてきた。落胆、絶望、試練…。昨シーズン後、球団の定期健診で異常が発覚し、年末の人間ドックで大腸がんと診断された。1月下旬にツイッターで公表。「常に前だけを向いて進んでいきます」と書いた。手術して入院し、リハビリに専念した。2月のキャンプは全休。実戦復帰したのは5月8日のウエスタン・リーグ中日戦(鳴尾浜)だ。そこから1カ月がたたない間に、1軍へスピード復帰を果たした。

前日2日も2軍ソフトバンク戦(丹波)で、復帰後発の本塁打を左翼にかけてきた。1軍も同日の広島戦の試合後、コーチ会議で原口の昇格を決定。4日に開幕する交流戦ロッテ戦から戦列に加え、攻撃力アップを見込む。矢野監督も期待は大きく、役割を説明した。

「(昇格理由は)総合的に。DHもあるし、捕手も2人。リュウ(梅野)も出っぱなしやし。代打で勝負強い部分もある」

パ・リーグ主催試合は指名打者制を採用し、原口も候補だ。昨季はおもに代打の切り札として活躍した。規定打席未満だが、打率3割1分5厘。08年に桧山進次郎氏(日刊スポーツ評論家)がつくった球団記録の代打シーズン安打「23」に並ぶなど、無類の勝負強さを誇った。矢野新体制当初は、原口も梅野と正捕手を競わせる構想だった。DH、代打、捕手として、幅広く用兵できる。

ファンも原口の復帰を待っていた。手紙、千羽鶴、SNSのコメントが手元に届き「僕が必ず1軍で活躍して、たくさんの人に夢や希望を与えられるように頑張っていこうと思います」とも話した。矢野監督はあらためて言う。「原口1人のことじゃない選手になっている。同じ病気をしている人たちにも元気や勇気を与えられるのは、原口しかできない。だから、そのパワーみたいなものを俺らのチームにも持ってきてくれると思う」。逆境にも耐え抜いた心の強さがある。原口もキッパリ言い切った。

「病院でベッドで寝ていたときはもっと最速でという気持ちでやっていた。なかなか復帰してからの体の状況とか、打撃や守備だったり、実戦感覚がなかなか少し追いつかない部分もあった。たくさん試合に出させてもらって今日を迎えられた。もう準備はできた。あとは、もう1軍に来たら結果がすべてだと思う」

矢野阪神に大きなワンピースが加わり、パの猛者相手に覇権奪回の道を歩む。【酒井俊作】