完璧に振り切った。広島小園海斗内野手がプロ1号を、神宮の右翼スタンドに突き刺した。3-0の3回2死一、二塁。ヤクルト先発高橋のスライダーを1球見逃し、甘く入った2球目の同じ球種を芯で捉えた。

「基本的に真っすぐ狙いで、変化球がきたら前で打とうと思っていた」。照れ笑いしながらナインに迎えられた。

打ちまくった。2回に中前打。5回に中堅へ二塁打。三塁打が出ればサイクルという9回は二塁打を放った後、二、三塁間でちゅうちょしタッチアウト。「三塁まで行ったらよかった」と苦笑いしたが、打点も、4安打もプロ初だった。

世代を超えた能力は早くから芽吹いていた。報徳学園1年時の監督で、高校日本代表でも監督として指導した永田裕治氏も、小園の対応能力に舌を巻いた1人。「高校1年時の横浜遠征で、2学年上の横浜・藤平君から神奈川大のグラウンドでライトにホームランを打った。まだ6月。これはすごい選手だと思いました」。中学卒業後わずか3カ月で、16年ドラフト1位の剛腕を打ち砕いたという。

悔しさをバネにした。6月20日ロッテ戦でプロデビューしたが、そこから3戦連続で計4失策を記録した。自信があった遊撃守備で、思うように動けなかった。一瞬の迷いが体を硬くする。1試合2失策を犯した22日の試合後、ベンチ裏で泣いた。「ミスなんて誰でもする」「明日はすぐ来る」「切り替えていけ」。鈴木が、長野が、野間が優しく声をかけてくれた。余計に悔しさが募った。

2軍落ちを経験し、7月15日の再昇格後は、見違えるようにたくましくなった。「いつかこの経験がよかったと思えるように頑張りたい」。16日DeNA戦から9戦連続先発出場。思い切った守備に加え、打撃でも失敗を恐れず積極的にスイングする姿が際立つ。

チームは今季最多18安打で7連勝。首位巨人との差を6ゲームに縮めた。小園は逆転4連覇に向け、がむしゃらに打席に向かう。【村野森】