<巨人-広島>◇30日◇東京ドーム

巨人原辰徳監督(61)が、史上13人目の監督通算1000勝を達成した。同一球団で1000勝以上は5人目の快挙となった。

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14年オフ。秋季練習が始まる前日だった。阿部のスマートフォンが鳴った。原監督からだった。「明日、来年のことについて話し合おう」。すぐに察した。「一塁にコンバートなんだろうなと思った。自分でもしっかりと考えて答えを出したし、異論はない。監督と同じ考えだった」。代名詞だった“捕手”との別れを決断した、はずだった。

99%ない。捕手で出場する可能性を原監督は「1%以下だ」と明言した。開幕2カード目の4月3日阪神戦。阿部はスタメンマスクを託された。「前日に相川さんがケガをして、捕手が足りなくなったことは分かっていた。監督室に呼ばれて、気がついたときには自分から『捕手に戻りましょうか』と言っていた。監督も『よし』とすぐに決まった」。最善策に予定調和はないと教えられた。

「99%ってほぼ100%って意味だけど『ほぼ』であって『絶対』じゃない。勝負ごとも同じ。だから勝つために1%にこだわるのも当然だと思う」

昨秋のキャンプ中に阿部から原監督に捕手復帰を志願した。「お前さんが決めたんだったら、そうしよう」と認めてもらった。結果的に現時点では捕手の出場はなく、スタメンは一塁だけ。「監督が何を考えているんだろうと、プロ1年目からずっと必死に食らいついてきた。だから、今は俺なりにだけど『あっ』って分かることもある」。99%の先にある1%にも思考がシンクロしている。

ルーキー時代に長嶋監督に開幕スタメンを進言してくれたのは、当時ヘッドコーチの原監督だった。1000勝のすべてに立ち会った唯一の選手。「1歩目がなければ2歩目はない。今の自分は原監督のひと言があったからだと思う」。師弟を超越した信頼関係がある。【巨人担当 為田聡史】