値千金の一打となった。日本ハム谷口雄也外野手(27)が楽天17回戦(札幌ドーム)の同点で迎えた7回2死二塁で、左翼線に運ぶ勝ち越しの適時二塁打を放った。17年に右膝前十字靱帯(じんたい)を損傷し、再建の手術とリハビリを乗り越えた男の決勝打で、チームの連敗は2でストップ。7月の22試合を16勝6敗で駆け抜け、首位ソフトバンクに再び0・5ゲーム差とした。

  ◇    ◇    ◇

同点に追いついた直後の7回2死二塁。谷口はスタンドからの大歓声も耳に入らないほど集中していた。「(清宮)幸太郎の代打だったのでプレッシャーを感じていた。無我夢中でした。うれしかったです」。2番手ハーマンの外角128キロのカーブに反応した。「見たことのない曲がり球、なんとか前に飛んでよかった」。左翼ライン際にポトリと落ちる勝ち越しの適時二塁打。塁上で、会心の笑顔とガッツポーズが飛び出した。

苦しみを乗り越えてきた。17年の春季キャンプで右膝前十字靱帯(じんたい)を損傷、長期離脱を強いられた。背番号4となった今季は、勝負の年と分かっていた。2月の沖縄・国頭キャンプから必死に汗を流した。「必要とされるポジションは絶対ある。(他の選手の)けが待ちではなくて、そこになんとか割って入りたい」。チャンスの時を、ひたすら待つ日々が続いた。

5月11日西武戦に先発で今季初出場すると、いきなり2安打。翌12日の同戦では1088日ぶりのアーチを放つも、以後スタメンから遠ざかり、登録抹消となった。7月10日ロッテ戦から再昇格し、先発出場で二塁打を1本放ったが、それ以降は途中出場4試合で4打数無安打。それだけに、この日の1本がうれしかった。「なんとか結果で応えられたというのと、(先発した清宮が2打席凡退で)やられていた悔しさもわかっていたので、何とか1本打ちたかった」と笑顔がはじけた。

チームは7月「貯金10」の快進撃で、首位ソフトバンクに0・5差まで詰め寄った。この日、自身も1勝にからめた。プロ9年目、年下のチームメートも増えたが「まだやれるぞ、というところを、1本でも多く安打を打って、こういう試合が1試合でも多くできるように」と言葉を絞り出す。ここからのV争いで、欠かせないピースになってみせる。【山崎純一】