原爆が投下されてちょうど74年の8月6日、広島が「ピースナイター2019」として開催したDeNA戦を逆転で制した。

勝利を引き寄せたのは、小園海斗内野手(19)。2回に左前適時打で反撃の口火を切り、5回に中前適時打で貴重な追加点を挙げた。これで2位DeNAに0・5ゲーム差、首位巨人に1ゲーム差。三つどもえの混戦の行方が、いよいよ分からなくなってきた。

   ◇   ◇   ◇

際どいコースの外角直球に、小園は迷わずバットを合わせた。3点を追う2回2死二塁。DeNA先発上茶谷にカウント1-2と追い込まれた4球目。打球が三遊間を破り、二塁走者がかえるのが見えた。本拠地初タイムリーで6試合ぶりの打点をたたき出し「使っていただいて、結果を出せてよかった」と話した。緒方監督からは「3点取られた後で1点返せたのは大きかった」とたたえられた。

危機感いっぱいだった。7月16日からスタメン抜てきに応えてきたが、ここにきて安打が出なくなった。8月4日阪神戦で17打席ぶりに安打を放ったが、安心などできない。打たなければ落とされる。早出で東出打撃コーチに指導を仰ぎ、長所である思い切りのよさを保ちつつ、必死にフォームを調整した。2戦連続安打は、ひたむきに打撃に向き合った結果だった。

どうしても打ちたい日でもあった。広島に原爆が投下されてから74回目の8月6日。兵庫・宝塚で育った小園にも、特別な思いがあった。小学6年の修学旅行で広島を訪れ、原爆資料館を見学した。被爆してさびだらけになった3輪車を見て衝撃を受けた。被爆体験者の話を聞き言葉を失った。「幸せに野球をできていると改めて思いました」。この日は特に、勝ってファンに喜んでほしかった。

1つ1つのプレーに必死に取り組むと決めている。5回には中前適時打で6点目をたたき出した。7回には中堅野間からの返球を捕り損ねる(記録は野間の失策)場面もあった。8回の打席では4球目をファウルしたときに手袋が破れ、あわててベンチ裏に下がった。よくても悪くても、前を向いた。試合後は「練習がありますから」とクラブハウスに消えた。

小園が火をつけた打線は13安打8点で圧倒した。ついに2位DeNAも首位巨人も1ゲーム差以内。大事な日に勝利を収め、広島が首位を射程圏に捉えた。【村野森】