勝ち星は消えても、先発の役目を果たした。楽天岸孝之投手(34)が、ロッテ戦で5回3安打1失点7奪三振と好投した。

雨による中断でリズムを乱されても気持ちは切らさず、ゲームを引き締めてブラッシュの劇的サヨナラ弾を呼び込んだ。4位ロッテとのゲーム差を2に広げ、試合のなかった首位ソフトバンクとも5・5ゲーム差。混戦に踏みとどまった。

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ホームでの登板ゲームは、12日のオリックス戦に続いて2試合連続のサヨナラ勝ちになった。岸は「球数が多すぎた」と反省しつつ、表情は心なしか穏やか。「先制されましたけど、粘りのピッチングはできました」と一定の手応えをにじませた。

プレーボール直前、雨で開始が遅れてマウンドから1度ベンチへ引っ込んだ。試合が始まっても、投げた5回までに2度の中断を挟んだ。「天気でどうなるか(いつ降雨コールドになるか)分からない。先制はされましたけど、チームが負けないように。切れることはなかったです、気持ちは」。百戦錬磨の経験で冷静に対処した。

3回まで1人の走者も許さないパーフェクト投球。ブラッシュの1本目で逆転してもらった直後の5回。勝負どころと見てギアを上げた。2死二塁から前の打席で先制打を浴びている鈴木に対し、この日最速となる147キロを計測。最後は宝刀カーブで空振り三振に仕留めると、グラブを拳でたたく、ささやかなガッツポーズに感情がにじんだ。

細心の注意を払って95球と球数がかさみ、5回で降板。6回に代わったハーマンが初球を同点被弾し、6月8日以来となる3勝目、今季本拠地登板5試合目の初白星はならなかった。「もうちょっと長い回を投げないと」と自らを律した上で「取りあえず、チームが勝ったので良かった」。敗れればロッテに並ばれ、今季のカード負け越しも決まる一戦。土俵際で踏みとどまる原動力になった。【亀山泰宏】