阪神鳥谷敬内野手(38)が30日、来季の去就を白紙とした。前日29日、事実上の戦力外通告といえる“引退勧告”を受けたことが判明。同日に球団幹部と話し合いの場を持ち、球団の方針を伝えられたことを認めた上で、今後について「どうするかは、まだ考えていない」と話した。当面はクライマックス・シリーズ争いに集中。シーズン終了後、他球団での現役続行を目指すのか、今季限りで現役引退するのか、熟考することになりそうだ。

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鳥谷はクラブハウスへと続く通路奥で足を止めた。巨人3連戦初戦前の甲子園室内練習を終えた午後3時過ぎのこと。落ち着いた表情で「話した方がいいかな?」と振り返った。谷本球団副社長兼球団本部長が、前日29日に鳥谷と話し合いの場を持ったことを明かした-。そんな質問が飛ぶと、「昨日会って話をしました。球団がどう考えているのかを聞きました」と静かに言葉を並べた。

今季は5年契約の最終年。積極的な若手登用に傾くチーム状況の中、代打中心の出番で状態を上げられずにいる。8月25日の敵地ヤクルト戦後には「自分もこれが最後(の神宮)になるかもしれないので…」と発言。一気にその去就に注目が集まる中、前日29日の午前中に揚塩球団社長、谷本球団副社長、嶌村球団副本部長の3人と会談した。この場で球団側の方針が伝えられた。

谷本球団副社長は内容について「本人が私にしゃべってくれと言っているなら別ですけど、皆さんに今の段階でしゃべるべきではない」と説明。鳥谷も「(自分は)言われた側なので、球団の方に聞いてください」と話すにとどめたが、事実上の戦力外通告といえる“引退勧告”を受けたとみられる。この日、鳥谷の穏やか表情には覚悟がにじみ出ているようにも映った。

球団は必要とあらば再会談も辞さない覚悟。ただ、球団の方針が急転するとは考えにくく、鳥谷は現実として他球団で現役続行する道を模索するか、今季限りでの現役引退を選ぶかの二択を迫られることになる。長年「虎の顔」を任されてきたベテランは去就について「自分がどうするかは、まだ考えていません」とした。当面は逆転CSを目指してグラウンドに集中。シーズン終了を待って、熟考期間に入ることになる。

この日の巨人戦は8回2死で8番梅野が打席に入った際、ネクストバッターズサークルに登場。9回は左腕中川が登板したこともあり、出番はなかった。チームは3連戦初戦を落としたが、3位広島との3ゲーム差は変わらず。まずは来るべき勝負どころに向けて鍛錬を続ける。【佐井陽介】