虎の天敵キラーになる! ソフトバンクから無償トレードで阪神に加入した中田賢一投手(37)が29日、西宮市の球団事務所で入団会見を行った。NPB通算100勝を誇る右腕は、新人の05年に阪神戦でプロ初勝利。そこから6連勝するなど、入団3年で8勝2敗と「虎キラー」の異名を取った。球団首脳は今季苦戦した巨人、中日戦での力投を期待。年俸は3500万円。中日時代の背番号「20」をつけ、リーグ制覇の使者になる。(金額は推定)

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日焼けした精悍(せいかん)な顔つきで、中田が新天地への決意を示した。「まだ現役をしたいという気持ちが強い。自分の中でもまだ『投げたい』『投げられる』と思っていました」。19年は1軍登板1試合のみで初の未勝利に終わった。地元福岡を離れてプロ16年目のシーズンへ。貪欲に出場機会を求め、トレード移籍にも戸惑いはなかった。

かつて虎を苦しめた右腕が、天敵キラーになる。中日で迎えたルーキーイヤーの05年。阪神相手にプロ初勝利を挙げた。そこから6連勝をマークするなど、入団3年で8勝2敗。「僕自身は一生懸命、投げてただけなので…」と照れ笑いで当時を振り返った。

今度はタテジマに袖を通し、虎が苦戦した相手に牙をむく。今季は優勝した巨人に10勝15敗、5位中日に10勝14敗1分けと大きく負け越した。会見に同席した谷本球団副社長兼球団本部長は「(巨人キラーに?)その方がいいですね。ジャイアンツさんとか、今年のドラゴンズさんにも苦しんだ。そういう強い相手に向かっていって欲しい」と期待した。通算で巨人に10勝6敗、古巣中日に3勝1敗と好相性を残す。中田も「また、新たにどちらかのチームのキラーになれるように」と頼もしく言った。

背番号は中日時代の「20」に決まった。「自分の中ですごく愛着のある番号。プロ生活15年がたつんですけど、来季もルーキーのように。はつらつとした気持ちでマウンドに上がりたいなと思います」。来年38歳のベテランが新人のように目を輝かせた。

6年間在籍したソフトバンクでは、5度の日本一を経験。「投手陣も打者も、目の前で『こいつには負けないぞ』という思いで。仲がいいながらもバチバチに意識して試合で投げたり『あいつが打ったらオレも打つ』みたいなギラギラ感がチーム内でもあった。そういうのがあれば、相乗効果で個々の力が上がっていくと思っています」。先輩、後輩に関係なく、強いチームを作り上げるノウハウを注入していく。

矢野監督からは電話で「思い切ってやって欲しい。力を貸して欲しい」と熱い言葉をもらった。「矢野監督を胴上げするために。また、ファンのみなさんと一緒に喜べるように。しっかりと1球、1球投げ込んでいきたい」。覇権奪還を狙う矢野阪神の右腕となる。【奥田隼人】

◆中田賢一(なかた・けんいち)1982年(昭57)5月11日生まれ、福岡県出身。八幡-北九州市大を経て04年ドラフト2巡目で中日入り。13年オフFA宣言しソフトバンク移籍。18年8月26日西武戦で、史上136人目の通算100勝を達成。181センチ、82キロ。右投げ右打ち。