高校野球の名門で鳴らす横浜元監督の渡辺元智氏(75)が3日、同校から阪神にドラフト3位指名された及川雅貴投手(18)に熱血エールを送った。甲子園で日本高野連主催の「甲子園キッズフェスタ」に参加。今春センバツで結果を残せず、今夏は神奈川大会で敗退するなど悔しさを味わった左腕に対して「プロに入って糧になる」「ケガするな。環境に慣れろ」などとエール。松坂や筒香らを送り出した名伯楽は金言を連発した。

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高校球界の名将が阪神のドラフト3位サウスポーに惜しみなく金言を授けた。甲子園で子供向けのイベントに参加後、横浜でエースだった及川へ強い期待感をにじませて言った。

「外で見ていても、いいモノがある。素晴らしいモノがある。甲子園大会は不本意な成績で(結果を)残せなかった。こういうものがプロに入ってから糧になるんじゃないですか。もともと潜在能力はあります」

渡辺氏はプロ挑戦を前にした及川の「反骨心」を察した。今春のセンバツ明豊戦は3回途中5失点KOで初戦敗退。夏も神奈川大会の準々決勝で打ち込まれ、ナインを甲子園に導けなかった。それだけに「本人の心構えが(野球を)うまくさせる。屈辱を味わった高校時代にね。1年生で入ってきて騒がれて3年目で逆にダウンした。そのあたりだと思います」と続けた。

悔しさをバネにしろ。渡辺氏の願いは153キロ左腕の力量を高く買うからだろう。1年夏から甲子園で躍動した逸材だ。「いいスライダーもあるし、ストレートも速い」と評価する。渡辺氏は68年から同校で指揮を執り、98年には松坂(前中日)らを擁して甲子園春夏連覇。DeNAの筒香も渡辺氏が手塩にかけた。15年で勇退し、17年に入学した及川と濃密な時間を過ごしていないが、誰よりも怪物に接した「眼力」は、プロ入りする及川に対する助言の説得力を高める。

「高校生は頑張ります。私が携わってきた選手で、高校生は頑張りすぎて入ってすぐにリタイアしてしまう。ケガですよ。ずっと見ていて、大学生や社会人より、高校生は痛くても痛いと言えない。この冬が本当に大事。体さえしっかりすれば結構やると思います」

この冬の鍛錬が、土台になる。故障防止こそ、プロで力強く1歩目を踏み出す原動力だろう。「体力さえできてプロに慣れることが一番。環境に慣れることが一番です」と力説した。技術面も「インコースに放れるとか、コントロールですね。最終的に。左で150キロ出ている。そこだけだと思います」と言及。名伯楽の温かいエールは及川に勇気を与える。【酒井俊作】

◆渡辺元智(わたなべ・もとのり)1944年(昭19)11月3日、神奈川県生まれ。横浜(神奈川)では3番中堅手。3年夏は県4強。神奈川大から65年に母校コーチを務めて、68年に監督就任。98年は甲子園春夏連覇、国体も制し史上初の3冠を達成した。甲子園は春夏計27度出場し5度優勝で歴代3位タイの51勝を挙げた。15年夏の神奈川大会を最後に勇退。楽天渡辺佳は孫。