スイングじゃなくて、シンギング!? 阪神新外国人のジャスティン・ボーア内野手(31=エンゼルスFA)が28日、ジェリー・サンズ外野手(32=韓国キウムFA)とともに関西国際空港着の航空機で来日した。

メジャー92発の4番候補は、自身のストロングポイントを「歌声」とにっこり回答。勝利を導く一撃でファンを喜ばせ、お立ち台で「六甲おろし」を歌っちゃう? この日で球団最多8外国人全員の来日が完了。ボーアは29日、サンズらと西宮市内で入団会見を行う。

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ボーアの“笑撃発言“が飛び出したのは、関西空港に降り立ち、送迎タクシーに向かう道中だった。大小8つの大荷物をカートで運び、青のスーツ姿でビシッと正装。だが自身のストロングポイントを問われると、ニヤリと笑って答えた。

「Singing Voice(歌声)!」

球団通訳も聞き直すほど、ユーモアたっぷりの迷回答に関係者も大爆笑だ。

阪神入り決定後、現役テレビリポーターのヘイリー夫人と日本語の勉強に励んでいる。到着ロビーで通訳から報道陣の質問を聞いた際には「ニホンゴデ(答える)?」と聞き返すほど。夫婦お立ち台も夢ではないが、「歌声」も自慢というなら、ますます夢がふくらむ。

矢野監督が4番を期待する豪快スイングで勝利を導けば、お立ち台でマイクも握る? 01年に広沢克実が甲子園でファンと「六甲おろし」を熱唱した例があるが助っ人では前代未聞。猛勉強した日本語の成果を発揮すべく、「ろーっこうおろしーに」と超ノリノリのパフォーマンスが見られるかもしれない。

左の長距離砲でメジャー通算92発。実力と実績は阪神歴代助っ人の中でも上位にランクインする。193センチの長身で、体重122キロは今季の日本球界最重量だ。チームは昨季、本塁打94本でリーグ5位で538得点は同ワースト。そのパワフル打撃に、得点力不足解消の期待がかかる。新外国人5人を獲得し、過去最多の助っ人8人体制で迎える今季、最も浮沈のカギを握る存在だ。

大の親日家は久々の日本に心を躍らせた。15年から3季、マーリンズでイチローとプレー。17年オフには同氏を訪ねて来日し、神戸で合同自主トレも行った。「空港がすごいきれい。17年に来た時は、海の水もすごくきれいだった。そういう印象があります」。コンビニでツナや照り焼きチキン入りのおにぎりを買うことも楽しみにしている。昨季はエンゼルスで大谷翔平ともプレーし、大谷からも日本野球を情報収集してきた。打って歌う最強助っ人へ。15年ぶりリーグ優勝を導く豪打に、期待が高まる。【奥田隼人】

<近年の主な外国人野手の来日第一声>

◆フィルダー(89年1月30日)褐色の童顔に白い歯を浮かべ、大阪空港で入団発表。「ルーキーリーグのとき、575フィート(約175メートル)のホームランを打ったことがある」。日本でも豪快な打棒を披露し、1年間の在籍ながら38本塁打を放った。

◆オマリー(91年2月7日)ブルーのスーツで決め、大阪空港に降り立った。「阪神が低迷していることは知っている。体力作りはOKだ」と準備万端であることを強調し、力こぶを作った。93年には首位打者となるなど、巧打でチームを引っ張った。

◆マートン(10年1月28日)第一声は日本語だった。関西空港でタテジマに袖を通し「日本の皆さん、初めまして。今ここに来られて、ホンマにうれしいです」。カブスで同僚だった福留の助言に従い、入念な準備の一端を見せた。通算1020安打は、球団外国人最多となった。

◆ゴメス(14年2月10日)生後間もない長女の体調不良のため、来日が大幅に遅れた。関西空港から沖縄・読谷村の宿舎に移動し会見。調整遅れを心配する声に「2日ぐらいあれば仕上がる」とサラリ。期待される4番について「7、8年ずっと打ってきた。大きいのを打つことがすべきこと」とたくましく宣言。1年目から109打点でタイトルを獲得した。

◆助っ人選手と歌 阪神では94年、オマリーが「オマリーのダイナミック・イングリッシュ」と題したCDを発売。日英2カ国語で六甲おろしを熱唱して話題に。他球団では、ロッテのリー兄弟が「ベースボール・ブギ」のタイトルでレコードを発表。息の合ったデュエットを披露した。また、阪急の抑え投手だったアニマルは「チャンピオン・アニマル!」を発売。引退後も日本に残り「亜仁丸レスリー」として芸能界で活躍する下地になった。

◆ジャスティン・ボーア 1988年5月28日、米ワシントンDC生まれ。ジョージ・メイソン大から09年ドラフト25巡目でカブスと契約。14年にマーリンズでメジャーデビューを果たした。15年から18年まで4季連続2ケタ本塁打で、MLB通算92発。メジャーでは一塁手。193センチ、122キロ。右投げ左打ち。