左膝蓋(しつがい)骨骨折からの復活を目指す日本ハム上沢直之投手(25)が、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のMVP右腕を参考に、投球フォームを改良している。リハビリ中の千葉・鎌ケ谷で30日、ノーワインドアップの始動の際に、左足を一塁方向へと引く新フォームを披露した。手本はメッツのマーカス・ストローマン投手(28)。6月を目標にしている復活登板では、故障前よりもパワーアップしてマウンドに戻る。

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球春目前の陽気な空の下、上沢がこれまでとは違うフォームで投球を繰り返した。「1年間投げていて、なかなか変えるのは難しいと思う。今こうやって間が空いたので良い機会かなと」。左膝のリハビリ期間を利用し、投球フォームの見直しに着手。お手本としたのは、17年のWBCに米国のエースとして出場し、同大会MVPに輝いたメッツのストローマンだった。

投球動作を始動する際、右足をプレートにかけ、左足を一塁方向へ引くのがストローマンの特長。「日本人にはしないような投げ方をしているし、なんでそういう投げ方をするのか気になる」。昨年は走者がいなくてもセットポジションを採用してきた上沢だが、これまでノーワインドアップで投げた際も、左足は自身の後ろ、二塁方向に引いてきた。

173センチと小柄なストローマンの最速は155キロ。小さく動くツーシームを操る。「小さい体であれだけのボールが投げられるのは体の使い方が上手だと思う。腕だけではなくて下半身の使い方、回転で投げている感じがした。僕もそういうふうに無駄のない感じで投げられれば」。参考としながら、最速151キロの球速アップや、ボールの質を追い求めていく。

故障後ブルペン入りはしていないが、この日も実際のマウンドと同じ18メートルほどの距離を取り、捕手役を座らせてボールを投げ込んだ。チームメートの白村も打者として立たせた。「今日はけっこう強めに投げました。8割(の力)くらいで」。キャンプインを目前にギアは上がってきた。

2軍の沖縄・国頭スタートのキャンプでは、ブルペンの傾斜を利用しての投球再開を目指す。「僕の場合はリハビリなので、実戦に入るという予定もない。でもここから1年間始まっていくので気が引き締まる思いはある」。完全復活を目指し、着実に階段をのぼっていく。【山崎純一】

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◆マーカス・ストローマン 1991年5月1日、米ニューヨーク州出身。12年のMLBドラフト1巡目(全体22位)でブルージェイズ入り。14年5月4日パイレーツ戦でメジャーデビュー。17年、開幕前に行われた第4回ワールド・ベースボール・クラシックに米国のエースとして出場。プエルトリコとの決勝は、7回途中1安打無失点の好投で優勝に貢献し、大会MVPを受賞した。同年は自己最多の13勝(7敗)。昨季途中にメッツへ移籍。メジャー通算146試合(先発140試合)に登板し、51勝47敗、防御率3・76。173センチ、82キロ。右投げ右打ち。