ヤクルト嶋基宏捕手(35)が、大きな大きな野村氏の背中を追う。

11日、打撃練習を終えた直後、大粒の汗ではなくあふれ出る涙をぬぐった。「今、現役の捕手で野村監督に最後に教えてもらったのは僕だと思うので。いずれ僕も現役をやめて、野村監督みたいな名監督になれるように、これからたくさん勉強したいと思います」。

楽天に入団した07年からの3年間は、野村監督との濃厚な時間だった。怒られもしたが、褒められたこともあった。捕手の道を究める上で、貴重な体験をし「出会っていなかったら、今ここでユニホームを着ていたかも分からない。僕のプロ野球人生において、一番の大きな存在です」と明かした。監督退任の際、贈られた言葉がある。「優勝するチームには、名捕手あり」。野村氏からの「お前が名捕手になれ」という思いが込められていた。その後、嶋は正捕手としてリーグ優勝と日本一を経験。ベストナイン、ゴールデングラブ賞も受賞し、侍ジャパンにも招集。野村氏の言葉を見事に体現した。この日、全体練習後に行われた捕手の特守では人一倍大きな声を出し、雰囲気を盛り上げた。今も、胸の中には野村監督の思いが生きる。「体も心も頭も、酷使していたと思う。ゆっくり休んで、見守ってほしいなと思います」と絞り出した。