「スアちゃん」が虎投のジョーカーだ! 阪神の新外国人ロベルト・スアレス投手(29)が、古巣ソフトバンクとのオープン戦で3回1安打1失点と好投した。

中継ぎ要員として入団したが、先発適性を示したことで両にらみ調整が本格化しそうだ。17年の右肘トミー・ジョン手術から間もなく3年。術後数年で以前より球速や成績が上がるという説もあり、最速161キロ右腕への期待は高まる。

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球数とともにスアレスの直球は威力を増した。4回2死三塁。牧原を追い込むと、最後は内角低めに渾身(こんしん)の156キロを決めた。牧原のバットは動かなかった。回をまたいで3連続三振を奪うなど、3回を1失点。「もう少しコントロールを良くできるかなと思う。しっかりとストライクを取りながら、常にバッター有利じゃなくて、自分有利でもいける投球をしたい」。古巣を自慢の直球でねじ伏せても満足はしなかった。

長いイニングへの適性を見せたことで、今後は先発と中継ぎを両にらみした調整が本格化しそうだ。矢野監督は「俺もまだ決められてなくて…。先発もありえるし、逆に言うと中(継ぎ)で長いところもある。スアちゃんのチャンスもいろいろなところで探していてね」と、どちらの可能性も否定しなかった。

スアレス自身は「どっちにしろ、しっかりと準備するだけ。自分が決めることじゃないし、しっかりと適応できるように準備したい」と頼もしい。ソフトバンクでは1年目の16年に中継ぎで58試合、昨年は9試合中のうち先発で6試合に登板した。外国人選手4枠の都合があり、矢野監督は先発した外国人投手を翌日に出場選手登録から外す「投げ抹消」で選手を入れ替えていくプランも示している。他の選手の調整と兼ね合いを見ながら、起用法を決めることになりそうだ。

この日は自己最速にあと4キロに迫る157キロを計測し、直球の強さは戻りつつある。「スピードを保てるように今後もしっかりと練習をして、いろんな課題を持ちながらやっていきたい」。17年4月に右肘のトミー・ジョン手術を受けて、間もなく3年となる。術後数年たって“パワーアップ”するケースも見られ、藤川、カブスのダルビッシュらもよみがえっている。ここまでを見る限り、スアレスの完全復活は近い。

「福岡にも戻れたし、1点取られてヒットも1本打たれたけど、全体的には良かったかな。いい1日だったよ」。3月1日は誕生日だった。29歳となった剛腕がマルチなピースになる。【磯綾乃】

▽阪神原口(スアレスとバッテリー)「フォーク、チェンジアップでストライクも取れる。球に強さもあるし、すごく器用でコントロールもいい。キャッチャーとしてはすごく助かる」

◆ロベルト・スアレス 1991年3月1日生まれ、ベネズエラ・ボリバル州出身。セシリオアコスタ高を経て、15年メキシカンリーグでデビュー。16年ソフトバンクに入団し、チーム最多28ホールドポイント。17年4月に右肘の手術を受けた。19年オフ退団。188センチ、95キロ。右投げ右打ち

◆トミー・ジョン手術 損傷した肘の靱帯(じんたい)を切除し、他の部位から正常な腱(けん)を移植する手術。74年に故フランク・ジョーブ博士が、左肘の腱を断裂した通算286勝のトミー・ジョン投手に初めて施術したことから通称でこう呼ばれる。日本では、古くは村田兆治(ロッテ)桑田真澄(巨人)らも受けた。かつては最低2年とされていた治療期間も大幅に短縮。「球速が5~6キロ速くなった」と感じる投手も多い。米紙ワシントン・ポスト電子版によると、レンジャーズ在籍中のダルビッシュ有が15年に手術を受けたところ、球速がアップ。直球の平均が術前の14年には148~151・3キロだったのが、16年の復帰直後には155・6キロに向上。平均4・8キロも速くなったと伝えている。