阪神の新外国人右腕ジョー・ガンケル投手(マーリンズ3A=28)は「フロントドア」を操り、開幕ローテへ順調な試投となった。オープン戦2度目の先発となったソフトバンク戦。初回にバレンティンに失投を2ランとされたが、その後は修正して3回を2安打2失点にまとめた。中でも光ったのは、ツーシームを左打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンに曲げる「フロントドア」だった。

2回。先頭の左打者栗原を6球目までは外角でスライダーとシンカー系、ツーシームを出し入れしてカウント3-2に。7球目で不意を突き、得意球を投げ込んだ。「栗原選手が外のシンカーを追っていた。それをうまく使ってインサイドに最後、決められたのは良かった」。球威、コントロールともに抜群の147キロツーシームに打者は手が出ず見逃し三振。緩急、変化球をテーマに3つの三振を奪ってみせた。

恵まれた体格を惜しみなく有効活用する。196センチの長身から精密機械のごとく、コーナーに投げ分けるコントロールが特徴。「自分の武器の1つ」と話す「フロントドア」も、長い腕を生かしている。「僕のリリースポイントは特に左バッターに対して遠く、そのまま真っすぐ自分の体に向かってくる風に見える。それが自分の球の性質的にシュートするので、左バッターに対しては本当に有効的な球だと思っています」。カウントも取れ、勝負球にもなるのは制球力があってこそ。オープン戦2試合で左打者11人に安打は許していない。

矢野監督もガンケルの特殊球に「あんまり日本のピッチャーには少ない。これから貴重なボールになるんじゃないかな」と評価した。すでに指揮官からローテ入り“当確”をもらっている右腕は被弾についても「シーズンに向けいい糧になる。(次回へ)今日と同じく、自分が必要なことをやっていきたい」。開幕へ、順調なメンテナンスを続けていく。【奥田隼人】

▽阪神原口(ガンケルとバッテリー)「真っすぐ、ツーシームの強さもすごくあった。失投は(被弾の)あの1球だけ。どの球種も両サイドに投げられるというのが持ち味。場面、場面、配球で使っていきたい」

◆フロントドア 打者の体に近い内角コースのボールゾーンから、ストライクゾーンに入っていく球の総称。スライダーやカットボール、カーブなど、捕手のミットに入る直前に変化する球の動きを利用する。右投手が右打者に対する場合には、体に当たりそうなスライダーなどを投げる。逆に左打者には、ツーシームなどを使うことが多い。逆に、外角ボールゾーンからストライクゾーンに入る球は「バックドア」と呼ぶ。

◆ツーシーム ボールの2本の縫い目を縦向きにし、2カ所にしか指をかけない投球のこと。一般的にストレートを投げる際は、ボールの縫い目4カ所に指をかけて握る。これはフォーシームと呼ばれる。ツーシームは指のかかりが少ない分、フォーシームで投げるより球威は劣るが、微妙な変化で打者のタイミングを外せる利点がある。