阪神ドラフト2位の井上広大外野手(18=履正社)が、1軍初安打&初打点を巨人戦の負けを消す千金の同点打で飾った。

20年初の伝統の一戦(甲子園)に途中出場。1点を追う8回1死一塁で、ローテ候補の鍬原から左越えの同点適時二塁打を放った。7日の日本ハム戦と2試合限定のお試し1軍だったが、矢野監督も「素晴らしかった」と絶賛。シーズン中に昇格する期待を大きく膨らませた。

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二塁ベースに到達した井上が、小さくガッツポーズした。無観客の甲子園が阪神ナインの歓声で沸いた。「ベンチのみなさんが叫んで手を上げてくれていたのでうれしかった。自分も手を上げて応えました」。20年最初の伝統の一戦で1軍初安打&初打点。しかも同点打の肩書き付き。昨夏の甲子園で履正社を日本一に導いた甲子園の星が、敗色濃厚の巨人戦を引き分けに持ち込んだ。

逆転を許した直後だった。1点を追う8回1死一塁。17年ドラフト1位でローテ候補の巨人鍬原の1-1からの3球目、内角低めの144キロ直球をすくい上げた。「うまく体が反応してくれた。打球は途中で見失ったけど、ベンチの声で落ちたんだとわかりました」。6回の守備から出場した巨人戦の初打席。「1軍で見たい」と熱望した矢野監督の期待に左越え二塁打で応えた。「どんどん振っていくことが大事だと思っていた」。ファーストスイングで一発回答。阪神高卒新人がオープン戦で打点を挙げるのは、88年高井一以来32年ぶり。背番号32が猛虎史の扉をこじ開けた。

雄姿は指揮官の目にも輝いて映った。「初球から振ればいいかなと思ったんだけど。結果はもちろんいいし、打球も井上らしい打球。場面も逆転されたあとやったっけ。場面もよかったし素晴らしいバッティングでした」。右の大砲候補の衝撃初安打をべた褒めだ。

187センチ、97キロ。焼き肉店では注文が追い付かないほどの大食漢だが、体重管理にも余念がない。「1度オーバー気味になった時期があった。そこから何キロか減らしたりして…」。大台100キロに到達するとプレーに支障が出る。現在は虎風荘での食事を一部制限しながら、プロで活躍するための肉体に仕上げている。

今回は前日の日本ハム戦と2試合限定のお試し1軍。だが、この日見せた魅力的な打棒でシーズンで昇格する期待も一気に膨らんだ。指揮官は「こっちが使いたいなっていうものを残してくれば、もちろんそれはあり得る」と期待。井上も「しっかりと自分のできることを最大限して、呼ばれるようになりたい」と応えた。甲子園Vの4番が、1軍の甲子園で大活躍する日が楽しみだ。【只松憲】

▽阪神井上打撃コーチ(井上広大について) 本人も自信になったと思うし、みんなにいい刺激になった。ははー、さすがやなーという打球だった。面白いものを見せてくれたし、あとは同じ名字なので、あか抜けるように僕が仕込んでいきます。