トヨタ自動車東日本(岩手)の千葉英太投手(20=千厩)が、高卒3年目の今季に進化を披露する。1年目は右肘痛、昨季は悔しい経験を積んだ最速145キロ右腕。現在闘病中の祖母亮子さん(75)に、社会人最高峰に位置づけされる都市対抗野球(東京ドーム)のマウンドに立つ姿を見せるためにも、「岩手のドクターK」と称された直球に磨きをかける。新型コロナウイルスの影響で大会開催も不透明だが、支えてくれる家族への恩返しを果たす1年は始まっている。

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千葉が気迫のこもった直球をブルペンで投げ続けた。「自分の野球は家族の絆が力になっているんです」。自営業で生計を立て、4人の男兄弟を育ててくれた父。寄り添ってくれる母や兄弟。「いまは、おばあちゃんが病気と闘っているんです。亡くなった祖父と、祖母が野球道具を買ってくれたり優しくしてくれた。もしかしたら今年しか見せてあげられないかもしれない。東京ドームのマウンドで投げる姿を見せて恩返ししたいし、病気に勝つ力にしてほしい」。余命宣告も受けている中、常に応援してくれる祖母。2月中旬に開始した静岡キャンプ前には、祖母を背負って自宅に運んだ。今季にかける大きな覚悟を背負った瞬間でもあった。

昨夏の岩手大会で千厩のエースとして活躍した弟哲太さん(18)の決断にも、気持ちが奮い立った。家族と過ごすために大学や社会人の誘いを断り、父の仕事を継ぐ準備を始めた。「弟のぶんもというのは正直ある。活躍しないと申し訳ない」。千葉の薦めもあって、今春からはクラブチームのオール江刺(岩手)でプレーは継続。「兄弟対決なんて出来たら、父も祖母も喜んでくれるかも」。夢は、また1つ増えた。

高校時代は2年夏の県大会4回戦に、延長13回23奪三振で存在感を示した。だが、入社直後の右肘痛で都市対抗初出場には貢献出来なかった。昨季は3月のJABA東京大会(神宮)で開幕投手を任されたが初回3失点など4回途中6失点。都市対抗東北2次予選では最後の座をかけた七十七銀行との第3代表決定戦で初回に5失点し、2年連続の出場権を失った。

今年は東京五輪の影響で都市対抗開催が7月から11月に移行。「祖母に冬まで頑張ってもらうためにも、早く結果を出したい。個人としては防御率0・00が目標。打たれても四球を出しても粘り強い投手になりたい」。日本選手権(7月2日開幕、京セラドーム大阪)を含めた、全国2大大会出場を導くエースに名乗りを上げる。【鎌田直秀】

◆千葉英太(ちば・えいた)1999年(平11)8月12日生まれ、岩手・一関市出身。藤沢小3年で野球を始め、藤沢中では軟式野球部。千厩高では1年夏からベンチ入り。高2春、夏に県8強。172センチ、67キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄、弟2人、祖母。